工事原価管理ソフトで効率化！
建設業者が知っておくべき導入のポイントとは？

工事原価管理では、建設業の工事にかかる資材費や人件費などの原価を適切に把握、計算し、コスト削減や決算処理に活用します。複雑になりがちな建設業の経理処理において、工事原価管理ソフトを導入することで作業の効率化を図れます。

本記事では、工事原価管理ソフトのメリットや選び方のポイント、導入時の流れを解説するとともに、企業におけるソフトの導入事例を紹介します。最適な工事原価管理ソフトを選び、担当者の業務負担の軽減や業務効率化を目指すために、ぜひお役立てください。

工事原価管理ソフトとは？

工事原価管理ソフトとは、原価の計算や予算などのデータを保管し、比較や管理を行うための専用ソフトです。資材や設備などの原価はもちろん、損益などさまざまなデータの一元管理や分析を効率的に行えます。

従来は、Excelなどを使って、工事現場ごとの取引内容や原価を集計するケースが多く見られました。ただ、作業に時間がかかるうえ、手入力の作業負担や人為ミスのリスクなどが課題となっていました。

工事原価管理ソフトでは、工事原価をリアルタイムで確認できるものや、会計処理や書類の自動作成などの機能を搭載したものもあり、経理業務の効率化を実現できます。ソフトによって異なりますが、建設業向けの工事原価管理ソフトで使える主な機能として以下が挙げられます。

• 原価計算：材料費、労務費、経費、外注費から原価を自動算出する
• 原価差異分析：標準原価を実際原価と比較、分析する
• 損益計算：製品や部門ごとに損益を算出し、予算の編成に使う
• 配賦計算：製品や部門を横断して発生する原価の振り分け
• その他：見積り書の作成、受注登録、会計システムや勤怠管理システムとの連携など

工事原価管理ソフトのメリット

工事原価管理ソフトを導入するメリットについて解説します。

建設業の原価管理を効率化できる

工事原価管理ソフトを導入することで、経理業務の効率化に繋がります。建設業の原価管理では、材料費、労務費、経費と外注費という4つの要素があり、他の業界に比べて項目が多くなっています。また、商業施設や土木現場など年単位で行う案件では、複数社が参加するため、管理項目も複雑になりがちです。

加えて、工事の途中で収益を分割して計上する工事進行基準や細かな分類を随時記録していく必要があります。専用ソフトを用いることで、収益の流れを現場ごとに管理する作業を効率化できます。

企業の利益を最大化できる

工事原価管理ソフトを用いることで、正確なコストの把握と管理が実現するため、企業利益の最大化につながります。工事に必要な原価やコストを正しく管理することは、正確な損益分岐に役立ちます。

原価は刻々と変わる可能性があり、気付かないうちに原価が上がっていた場合、利益の低下を招く可能性があります。利益を上げるためには細かな仕訳をしっかり記録することが重要で、工事原価管理ソフトが管理を支援します。

ヒューマンエラーを回避できる

ソフトを活用することで、人間の手作業によって発生する可能性のある人的ミスを避けられます。多くの原価を把握、管理することは大変な作業です。Excelなどでフォーマットを作成し、随時更新する方法は従来より採用されてきましたが、入力ミスやセキュリティなどの課題も存在します。

工事原価管理ソフトでは特殊な原価にも柔軟に対応しやすいため、担当者の負担も軽減されるでしょう。

工事原価管理ソフトを選ぶときのポイント

工事原価管理ソフトにはさまざまな製品やサービスがあり、搭載されている機能や操作性はそれぞれで異なります。業務負担の軽減や生産性の向上といった効果を得るためには、自社に適したソフトを選ぶことが大切です。ここでは、工事原価管理ソフトの選び方のポイントを紹介します。

提供形態：クラウド型かオンプレミス型か

工事原価管理ソフトには、主にクラウド型とオンプレミス型という2種類があります。クラウド型は、インターネット上のサーバーを利用してシステムを提供する形式です。システム用に自社サーバーを設置する必要がなく、初期コストを抑えつつ短期間で導入できます。

一方、オンプレミス型は、ユーザーの自社サーバーにシステムを構築する形式です。運用までの費用や時間は比較的かかりますが、自社専用のシステムをカスタマイズでき、セキュリティ性にも優れています。

現在はクラウド型のサービスが主流で、工事原価管理ソフトにも多く採用されています。費用対効果や使える機能、独自機能の必要性などに応じて適切なものを選びましょう。

建設業界の習慣に対応しているか

建設業では、特殊な勘定科目や工事の進行基準なども適切に会計処理を行う必要があります。個別の原価計算や業界ならではの習慣にも対応しやすい工事原価管理ソフトであれば、導入後すぐに原価管理を進められるでしょう。

また、カスタマイズ性が高く、柔軟に機能や入力項目を調整できるシステムなら、スムーズな対応が可能です。業務が煩雑化しないように、複雑な経費処理に対応できるかどうか事前に確認しておきましょう。

工事の進捗に伴う原価状況のリアルタイム把握

多くの工事原価管理ソフトでは、工事の進捗に伴い、リアルタイムで原価状況を把握できる機能が付帯しています。

画面表示や使い勝手は、製品やサービスごとに異なるため、使用者が使いやすいものを選ぶことが大切です。無料トライアルを利用して、操作性を確かめる方法も有用です。

ソフト導入・運用時にサポートを受けられるか

ソフトの導入や運用におけるサポート体制についても確認しておきましょう。ITシステムに詳しい専任者が社内にいない場合は、初期設定や運用に戸惑ってしまう可能性があります。特にパソコンに不慣れな人が使う場合は、手厚いサポートがあると安心です。

また、トラブルが発生した際に、相談窓口があればすぐに相談してアドバイスを仰げます。電話やライブチャット、メール以外にも訪問や遠隔操作などのサポート手段や、利用時の料金は企業や製品・サービスによって異なります。

会計ソフトなど他製品との連携

会計ソフトや勤怠管理ソフトなど、他の製品と連携することで、さらなる業務効率化が期待できます。既存の会計ソフトと連携することで、原価などのデータ入力を簡略化でき、人的ミスを回避できます。

また、勤怠管理ソフトとの連携ができる場合、現場での作業効率が向上し、工事の進捗にも良い影響が考えられます。

カスタマイズができるか

自社で独自のルールやフォーマットを設けている場合、カスタマイズ性を備えたソフトを選ぶ必要があります。カスタマイズが有償でも、自社に最適な原価管理ソフトへカスタマイズできれば、長期的な業績向上につながる可能性があります。

また、得意先から書類の形式を指定されている場合にも、カスタマイズ機能が必要です。オリジナルのテンプレートを反映して印刷できる機能を搭載したものもあるため、事前に確認しておきましょう。

工事原価管理ソフト導入の流れ

ここからは、実際に工事原価管理ソフトを導入する流れについて解説します。

1. ソフトの導入目的を明確にする

まずは現状の課題を整理し、ソフトの導入目的を明確にしましょう。工事原価管理ソフトは、経理業務の効率化や負担軽減といった目的で導入するケースがほとんどです。

ただ、具体的にどういった状況を目指すのか掘り下げておけば、ソフトに必要な機能や仕様が自然と定まり、システム選定がスムーズに進みます。

2. 使用する予定のあるチームや担当者に周知する

経理担当者だけでなく、システムを使用する予定の部署やチームのメンバーにもソフトの導入について周知しておくことが重要です。突然今までのやり方が変わると、現場で混乱を招く恐れがあります。

また、実際にシステムを利用する人にとって使い勝手が悪いと、業務の進捗が滞り、日常業務に影響を及ぼすことも考えられます。計画的なソフトの導入には関係者の協力が不可欠であり、場合によってはプロジェクトチームを組むことも検討しましょう。

3. ソフトを選定する

多数ある工事原価管理ソフトのなかから、候補となるものを選定し、比較検討しましょう。オンプレミス型の場合は、求める機能や効果をベンダーに明確に伝えてカスタマイズしてもらう必要があります。

クラウド型には無料トライアルを提供している製品・サービスも多いため、積極的にお試しを利用して実際の操作性を試してみましょう。

4. 正式にシステムを導入する

システムを選定したら、正式に導入します。システムの機能や仕様を確認し、既存データの移行の準備を進めておくと良いでしょう。

システム導入時に何かあった場合、すぐに連絡、相談できるようにサポート窓口を確認しておく必要があります。また、社内におけるフォロー体制も構築しておくと安心です。

5. 定期的にフィードバックと見直しを行う

新しいソフトの導入、運用においては、定期的な見直しと改善が大切です。利用者や関係者からフィードバックをもらい、必要に応じて機能や使用感について改善を行いながら、より使いやすいシステムを目指しましょう。

まとめ

工事原価管理ソフトは、建設業での原価管理や経理業務の効率化を促すために有用なソフトです。ソフトを導入することで、外部ソフトとの連携による自動入力や自動反映が可能になり、人的ミスを回避できるため担当者の負担軽減につながります。

ソフトの選定では、使える機能やカスタマイズ性、サポート体制などを総合的に比較し、費用対効果の高いものを選ぶことが重要です。