浄化槽の設置工事は無断で行なうことはできず、特に新築工事では建築確認が必要です。申請に伴いいくつかの図面を用意したうえで申請する必要があり、手続きが煩雑だと感じる人は多いかもしれません。しかし無断で工事をするのは違法となり、罰金刑が科されます。今回は、浄化槽設置届申請で必要な図面の種類と記載方法、記載にあたっての注意点を解説します。浄化槽設置工事を請け負うために必須となるので、この機会にポイントを押さえておきましょう。
浄化槽設置届申請に必要な図面の種類
建築確認申請を伴う浄化槽設置工事の場合、浄化槽設置届申請と一緒に提出する図面がいくつかあります。そこで、各図面の概要と記載する際のポイントを解説します。
平面図
平面図は水平方向に切った建物を真上から見た図面です。建設業における図面のなかでも基本的な図面であり、ほぼすべての職種で建物の概要を確認するために活用しています。作図する際の縮尺は100分の1が標準ですが、浄化槽設置届申請に使用する平面図の場合、敷地などの規模に合わせて図面の縮尺を変更することも可能です。また、建物が3階建て以上の場合、1階の平面図は屋内外に設置する排水設備も図面に落とし込みます。2階建て以上で配管計画が異なる場合は代表的な階の平面図を作成します。地下階がある場合は、最も深い階の排水層と排水ポンプを含む平面図、集合住宅の平面図は全体および各棟ごとの1階部分の平面図を作成します。自治体によっては、建築士の氏名および登録番号の記載が必要です。
配置図
配置図とは、道路の位置と幅員、敷地の形状、敷地内の建物の配置および浄化槽の設置位置、方位などを描いた図面です。建築確認申請を伴う場合、平面図と同様に申請時の提出が必須となっており、図面作成時は縮尺を100分の1以上で描きます。浄化槽設置届申請における配置図には、浄化槽の位置と敷地内から敷地外へと続く放流経路、放流先の断面図の記載が必須となるため忘れないようにしましょう。また、道路と敷地、敷地と隣地、敷地内それぞれの高低差の記載も必須です。自治体によっては単独処理浄化槽または汲み取り便槽の位置を記載することも求められます。さらに、生活排水管は赤線、雨水管は緑線など細かく指定されているケースもあるので事前に確認することが大切です。
建築物の各階平面図
各階平面図とは、階ごとの形状と床面積、求積方法を記載した図面のことです。建物の各階平面図は、一般的に建物の新築時や建物表題登記を申請する際に法務局へ提出する図面ですが、浄化槽の設置や廃止をする際も必要となります。建物表題登記の申請時は、原則として1枚の紙に建物図面と各階平面図を記載しますが、浄化槽の設置等の申請時は分けて記載しても問題ありません。ただし、平面図と同様に建築士の氏名および登録番号の記載が必要なケースもあるので事前に確認しましょう。図面を描く際は、木造や鉄筋コンクリート造などで寸法の測り方が異なるので注意が必要です。また、図面には各室の用途を記載する必要があります。
給排水管図
給排水管図とは、給水配管と排水配管の経路を表した図面のことです。給排水管図を描く際は平面図をベースに記載しますが、排水勾配を示す必要があります。排水管の勾配は、配管の高低差÷管の長さで算出可能です。同じような図面に給排水衛生設備図がありますが、こちらは給排水管に加え、ガス配管や消火設備なども記載します。配管の系統図に使用する記号はさまざまあるので、表記する際に間違えないように注意しましょう。たとえば、メインとなる配管は実線で描きますが、鋼管や塩ビ管などの直管は直線、フレキシブルホースやゴムホースなどは曲線で描きます。また、四角や丸などの図形は大きさや角度によって表すものが異なります。たとえば、小さな丸は計測機、大きな丸はエネルギー変換器を意味するので、作図の際は間違えないように注意が必要です。
縦断図
縦断図は土木工事で使用される図面のひとつで、道路を中心線に沿って切断して横から水平に見た図面です。道路の高さをグラフ状に表すのが特徴で、工事する区間の高低差を簡単に把握できます。図面の下部には地盤の高さや道路の高さなどを記載するため、高低差が簡単にわかるのが特徴です。縦断図を描く際は縦の縮尺が100分の1、横は300分の1となり、縦と横で縮尺が異なります。また、自治体によっては横断図も必要です。横断図とは、道路を輪切りにして横から断面を見た図です。浄化槽設置申請の横断図には、道路と敷地の境界線にある側溝や放流先水路などの断面を記載します。なお、土木図面の用紙はA0からA4サイズまでありますが、A1とA3が良く使われています。
浄化槽工事で気をつけるべきポイント
浄化槽の設置工事は補助金が用意されているので、施主に説明できるように備えておくことが大切です。浄化槽工事の注意点として、補助金と図面を作成する際のポイントを解説します。
浄化槽の設置は補助金の対象
浄化槽の設置については、各市町村が交付している補助金を利用できます。申請手続きは浄化槽工事事業者が代行できるため、補助金について理解しておくことで施主への案内がスムーズにできます。工事完了後に実績報告書を提出し、自治体の立会検査を経て施主に補助金が振り込まれる流れです。また、設置工事は浄化槽設備士が工事を監督し、工程ごとの写真撮影をするなどのルールもあるので事前に確認しましょう。補助金の対象となるのは、雑排水処理を促進する必要があると市町村が判断した地域です。具体的には、下水道法や下水道事業計画で定められているので、工事を担当するエリアの条件を確認しておきましょう。なお、補助金の額は浄化槽の大きさや自治体によって違いがあります。
浄化槽の設置申請図面を作成する際の注意点
浄化槽の設置申請に伴い図面を描く際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 建築物は面積を算出しやすいように縦横の寸法を明確に記入する。
- 隣地境界線、敷地境界線、道路境界線などの各境界線を記入する。
- 居室、キッチン、風呂など部屋ごとの用途を記入する。
- 放流先を記入する。浄化槽設置届出書の「放流先又は放流方法」と整合性がとれるように注意する。
- 倉庫や車庫が敷地内にある場合は配置図に位置を記載したうえで排水設備の有無を記入する。倉庫内の場合は「農業用」などの用途を明記する。
- 建物内にある排水設備の名称を記入し、すべてが浄化槽へ接続していることがわかるように配管を記入する。トイレ内にある手洗い器、2階にある排水設備も浄化槽に接続する。
- 求積図及び求積表を記入する。平面図と求積図・求積表に記載している寸法の相違、求積表の計算間違いないか提出前に確認する。
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まとめ
浄化槽の設置工事を請け負う場合、自治体へ申請書類や図面を提出する必要があります。それぞれの図面は縮尺も決まっていますし、明記する項目も定められているので見落としがないように確認が必要です。今回紹介した浄化槽設置工事の申請図面を作成する際のポイントを押さえつつ、ミスのない図面作成を行いましょう。また、浄化槽の設置は補助金を活用できますが、その際の手続きは施主に代わって業者が行うのが一般的です。申請の方法や必要な書類を押さえておくことで、施主の負担を減らすとともに工事業者としての信頼感も高まります。
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