施工図は、建設・土木現場で工事を進めるうえで欠かせない図面の1つです。さまざまな業者が出入りする現場において、それぞれの作業をスムーズかつ適切に進めるために、正確な施工図を作成する必要があります。効率よく精度の高い施工図を作成するうえで大切なのが、良いCADソフトを選ぶことです。
本記事では、施工図の定義やCADソフトで作成するメリット、そして施工図作成におすすめのCADソフトについて解説します。現場作業で重要な役割を果たす施工図を効率よく作成するために、ぜひお役立てください。
施工図とは?
施工図とは、建物やビルなどを施工するために必要な情報が記載されている図面です。設計図や意匠図は、施主の意向を把握し、建築に関わる法律や予算の裏付けを反映した図面であり、これだけでは現場で業者が作業できません。
そこで、業者が施工するために必要な寸法や使用する資材、納まりなどの情報を網羅した施工図が必要です。施工図は、設計担当のほか、戸建ての現場監督や施工担当者が作成することもあります。
施工図をCADソフトで作成するメリット
施工図をCADソフトで作成するメリットは多数あります。ここでは、主なメリットを解説します。
図面の精度と正確性が上がる
CADソフトを使うことで、精度が高く正確な図面を効率的に作成できます。手書きなどアナログな方法で作図するよりも寸法や形状の数値をデータとして入力、算出できるため品質向上につながります。
人為的ミスを防止できる
CADソフトを使って施工図を作成する場合、人為的なミスを防止できるというメリットもあります。CADソフトが普及する以前は手書きが一般的で、製品や建造物の設計段階から人為的なミスが生じやすい傾向がありました。
CADソフトを使うことで、コンピューター上で作業を完結でき、エラーを最小限に抑えることが可能です。また、点線の種類や線の太さの調節といった熟練のベテランに求められる技術も、CADソフトなら誰でも簡単に扱えるでしょう。
図面のデータ化でイメージの共有がしやすい
施工図をデータで扱うことで、イメージの共有が容易になります。CADソフトではすべての図面をデータとして作成・保管するため、メールやクラウドツールを使って他者と簡単に共有でき、イメージの可視化とコミュニケーションが円滑に進みます。
近年普及している3D対応のCADソフトを活用すれば、建物やビルなどの施工図を簡単に立体化できるため、平面だけではいイメージしにくい箇所も伝えやすいでしょう。
複数人が同じ図面で編集・修正できる
CADソフト上に施工図データを作成、保存すれば同じ図面を複数人が編集できます。アナログの図面は現物が1つしかなく、複数人での編集、共有が困難です。
CADデータであれば、他者のパソコンやタブレットなどでも閲覧でき、場合によっては、複数人で同時に編集、修正できるため、リモートワークや現場での対応が効率的に進みます。
修正や変更に対応しやすい
CADソフトの図面データは、いつでも簡単に修正や変更が可能です。手描きの図面で描かれた線や形を修正することは大変ですが、データであれば瞬時に修正できます。担当者との打ち合わせをしながら図面を修正をすることもでき、作業効率が大きく向上するでしょう。
データを再利用できる
施工図に限らず、保存しているCADデータは必要なタイミングで再利用できます。例えば、過去の建設現場の施工図データを、新規工事で参考として活用することが可能です。また、トラブルが発生した際に、原因を追求するためにも役立つでしょう。
施工図の作成で使えるCADソフトまとめ
ここからは、施工図の作成で使えるCADソフトを10紹介します。機能性や料金なども解説しますので、自社のCADソフト選びの参考にしてください。
※特記ない限り、価格は税込み表記です。
plusCADシリーズ
plusCADシリーズは、水道工事や電気工事、機械工事に特化した施工図などの作図から、見積もり書、申請書類の作成まで関連データを一元管理できるソフトです。電気と空調、設備工事に特化した見積もりシステム装備の「plusCAD総合α」をはじめ、いくつかの種類があります。
電気工事に特化した「plusCAD電気α」はマウスの左クリックのみで作図でき、パソコン作業に不慣れな場合でも使いやすいでしょう。手書きとほぼ変わらないシンプルな操作で、簡単に図面が完成します。
また、水道工事用の「plusCAD水道」は、上下水道申請から配管図、立面図などの各種図面、自治体への申請書類までをまとめて管理できます。JW CADとの連携も可能で、作図業務の効率化をサポートします。
【特徴・機能性】
- 専用サイト・配信メール・訪問・遠隔の4つのサポート体制で初めてでも安心
- マウスが中心の簡単な操作性で図面や見積書の作成時間を短縮
- 見積書を図面からワンタッチで作成可能
【料金】
要問合せ
Jw_cad
Jw_cad(ジェイダブリューキャド)は、主に建築分野を中心に使用されている2D汎用CADソフトです。Webサイト上でダウンロードするだけで、完全無料で使えるにもかかわらず、有償ソフトと同様の充実した機能を備えています。
高機能な2DCADとして知名度が上がっており、多くの書籍が販売されています。また、オンライン上でのユーザー同士の情報交換用サイトもあり、知識や情報を習得しながら使うことが可能です。
【特徴・機能性】
- 直感的なマウス操作で作図ができるクロックメニュー
- 2.5D機能でアイソメ図の作成も効率的
- 建具や設備のコマンドが豊富
- 一括で包括処理ができ建築図面の作成に役立つ
- DXF形式でAutoCADとの互換性あり
- Windowsのみに対応
【料金】
無料
Autodesk AutoCAD
AutodeskのAutoCADは、世界中でのシェアの高い汎用CADソフトウェアです。日本語版もリリースされており、WindowsだけでなくMacにも対応しているため、大手建設企業や設計事務所などでも導入されています。
お試し用の無料版と有償版がありますが、無料版でも幅広い機能を利用可能です。
【特徴・機能性】
- 3Dモデリングやビジュアライゼーションなど高度な機能を装備
- 建築・土木・機械分野など多くの分野・領域で採用されている
- アプリ版もありスマホやタブレットからも使いやすい
- 標準のAutoCADや7つの業界専用のツールセットが使えるプランも
- ウォークスルー機能や図面メモ、コメントの書き込みなど機能が豊富
【料金】
1ユーザーあたり
- 1ヶ月:8,800円
- 1年:71,500円
- 3年:214,500円
RootPro CAD
RootPro CAD(ルートプロ キャド)は、2D汎用CADソフトウェアです。設計者向けの有償版と、2D作図の基本的な機能を搭載した無料版があり、無料版は永久利用できます。AutoCAD・Jw_cadとの互換性があるので、取引先とのやり取りもスムーズでしょう。
ユーザーインターフェースは、CAD未経験者や初心者でも操作しやすいよう配慮されています。また、オリジナルアドインの開発・導入により、操作の自動化や効率化が進むため、作業負担の軽減に役立ちます。
【特徴・機能性】
- スナップやグリッドなど作図補助機能が充実
- DWGやDXF、SXFなどのさまざまなファイル形式に対応
- PDFに書き出し可能
- 印刷禁止やコピー禁止などセキュリティ対策も可
- ビューコントローラーやドッキングウィンドウなども対応
- 対応OSはWindowsのみ
【料金】
RootPro CAD 12 Professional通常版ライセンス
- 1ライセンス:19,800円
- 5ライセンスパック:89,100円
- CD-ROM版1枚 (1ライセンス):23,100円
Vectorworks Architect
Vectorworks(ベクターワークス)とは、アメリカのNemetschek Vectorworks社が開発した汎用CADソフトです。Vectorworks Architectは、建築設計や内装、ディスプレイデザインに特化しており、インテリア設計支援機能や拡張機能、豊富な建築向けのデータライブラリなど先進的な機能を多数搭載しています。
2Dに加えて、3Dやプレゼンテーションなどにより、さまざまな空間を総合的にデザインするために役立ちます。デザインを重視する設計事務所などでよく導入されています。
【特徴・機能性】
- PhotoshopやIllustratorなどAdobe製ソフトと連携しやすい
- 絵を描くような操作性
- WindowsとMacの両OSに対応
- 2D図形や作図した壁から一括でスペース(空間定義)を作成できる
- 3Dデータ駆動型ツールで品質を維持したまま建設ドキュメントを作成可能
【料金】
- 永続ライセンス(スタンドアロン版):490,600円
- Vectorworks Service Selectバンドル(スタンドアロン版):524,700円
- 乗換版(スタンドアロン版):451,000円
- サブスクリプション:245,300円
Creo
Creo(クリオ)は、製品設計や製造プロセスを中心に使われる3DCADソフトウェアです。製造部品やアセンブリの作成、解析、シミュレーションなどに役立つツールを備えています。また、異なる業界やプロジェクトに適応できるカスタマイズ可能な機能も利用可能です。
Creoの無料版は学生向けとして提供されており、教育機関などで幅広く活用されています。無料版でも、アセンブリの操作や図面との連携、データ互換機能といった多くの機能が使えます。
【特徴・機能性】
- 製品の構想、設計、解析をシームレスに実行可能
- 製品の重量やパフォーマンス、コスト、サステナビリティをシミュレーション可能
- 材料費、人件費、間接費などコスト削減にもつながる
【料金】
Creo Design Essentials
- ノードロック:年間517,000円(税抜)
- フローティング:年間633,000円(税抜)
CADCREATOR
CADCREATORは、製造業における機械設計を中心に採用されているCADソフトです。高い操作性と豊富な機能が評価されており、自由度の高い操作が簡単に実現しています。3DCADソフトのように、3D思考や操作手順を学習しなくても、2D設計の延長として3D設計を展開できる点も特徴です。
【特徴・機能性】
- 製造業の機械設計者にとって便利な機能が豊富
- 複数の入力操作を同時に受け付けるコマンド群でオペレーションが簡潔化
- AutoCADやJW CADなど幅広いCADデータとダイレクト変換機能を標準搭載
- 図面枚数や図面1枚あたりの要素数が無制限で図面の同時処理にも対応
- 2D設計の延長線上で3D設計環境を実現
【料金】
要問合せ
AR_CAD
AR_CADは、手軽に作図ができる2DCADソフトです。直感的な操作により、本格的な建築用図面から画像付きのパンフレットまで幅広く制作できます。多くのデータ形式に対応しており、さまざまなソフトウェアで活用できます。
他のCADソフトには見られない機能としては、背景や壁紙を設定できる環境カスタム機能があります。自分好みのCADソフトを使いたいという人におすすめです。
【特徴・機能性】
- ペイントソフトのような直感的な操作
- ステータスバーに次の操作手順が表示される
- SGD形式やSFC/DXF形式、JWW/JWC形式、PDF形式など幅広いファイルに対応
- 無料会員登録で使用マニュアルを入手可能
【料金】
フリーソフト(ただし、商用利用は事前連絡が必要)
CADWe’ll Linx V4
CADWe’ll Linx V4は、空調・衛生・電気の建築設備用の3DCADソフトです。稼働本数6万本強の建築設備専用CAD「CADWe’ll Tfas」の後継バージョンとしてリリースされました。
ワンモデル運用を前提としたBIMアプリケーションで、設計から施工、運用まで業務全体の生産性向上をサポートします。干渉検査機能により、エクセルファイルから該当箇所をLinxで表示できるため、現場での調整をスムーズに行えます。
【特徴・機能性】
- 見たい箇所やフロア・部屋・図形関連箇所だけを表示するクリッピング機能
- 禁則処理機能で部材同士の重なりを回避し、施工可能な図面を作成
- 配管やダクトの系統ごとに色分け管理が可能
- 図面の3DPDF出力によりタブレットなどで3Dモデルを閲覧可
- STLファイル形式への出力にも対応
【料金】
要問合せ
CADEWA Smart
CADEWA Smartは、電気や空調、衛生など建築設備に特化したCADソフトウェアです。平面図作成に特化した機能限定版の「Smart LT」と、材料集計や各種計算機能を搭載したフル機能版「Smart」などがあります。
業界初の”賢さ”を備えた3DCADでもあり、高精度な3D表現が可能です。CAD上の複数タスクを並行処理できるため、効率的な作業が実現します。
【特徴】
- 不整合箇所や施工方法のミスを確認できる施工チェック機能
- 電話やEメール、遠隔リモートによるテクニカルサポートを利用可能
- 期間中にリリースされるバージョンアップ版も契約可能
- 30年以上の歴史と実績
【料金】
オープン価格
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まとめ
施工図は、建設現場や土木現場で施工業者が作業するために必須の図面です。従来は手書きの作図が一般的でしたが、CADソフトを使用することで寸法や型番などの数値がデータ化されるため、人為的なミスを防いで効率的に正確な図面を作成できます。
また、修正や変更も瞬時に反映でき、過去の保存データを現場でトラブル対策などに活用することも可能です。CADソフトはさまざまなものがありますが、予算や機能性を考慮して最適なものを選びましょう。
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