配管図面は、水道工事をはじめ、ガスや電気、空調などの設備工事で使われる図面の1つです。天井や壁の裏、床下などの限られたスペースに必要な配管を適切に配置し、機能させるためには、正確な配管図面が必要です。
本記事では、配管図面の定義や種類、図面作成における注意点などについて解説します。水道工事でも使用される重要な配管図面について理解を深め、記号の重要性など、さまざまな情報をご紹介いたします。
配管図面とは?
配管図面とは、液体・気体・個体などを通す配管を住宅やビルなどに設置するための図面です。水道やガス、電気、空調などのインフラ工事に欠かせない配管を適切に設置し、機能させるうえで欠かせない図面の1つです。
一般的な図面は、真上から見た状態をそのまま平面的に図面にしますが、配管図の場合は平面図では表記できない情報を伝える役割も担っています。
配管図面の種類
配管図には、「アイソメ図」「アクソメ図」の2種類に加えて、「配管系統図」と呼ばれるものなどがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
アイソメ図
「アイソメ図」とは、アイソメトリック図の略で、立体を平面として表現した図面を指します。立体を斜め上からの視点で表示する「等角投影図」の立体表現法を使用し、2D上に3Dで表現したものです。
一般的なアイソメ図では、立体のX、Y、Z軸をそれぞれ120°の等しい間隔で投影します。各軸が等間隔なうえ、各辺の寸法も実寸で描くため、寸法がより伝わりやすいのが特徴です。そのため、正面や真上から見た図よりも、オブジェクトや建物などの全体イメージを掴みやすい傾向があります。
配管ルートを立体的に表示でき、完成後の配管の設置状態や経路を視覚的にわかりやすく仕上げることが可能です。なお、アイソメ図自体は建築図面としてもよく利用されており、身近なものには商業施設の館内案内図などがあります。
アクソメ図
アイソメ図と似た用語に「アクソメ図」があります。「アクソメ図」は、アクソノメトリック図の略で、「軸測投影図法」を使った図面です。平面図を水平線に対して幅・奥行きがそれぞれ30°、60°になるように傾けてから、高さの情報を追加します。そのため、水平線に対する幅や奥行きの角度がアイソメ図とは異なります。
すでに平面図がある場合、アクソメ図は比較的簡単に作成することが可能で、立体的な全体イメージを把握するためにも役立ちます。ただし、奥行きが長くなるほどひずみが生じやすいため、違和感が目立ちやすい点に注意が必要です。
また、遠近法が効かず、スケールを変更したい場合に幅・奥行き・高さを同じスケールで変える必要があります。
配管系統図
「配管系統図」とは、配管を必要とする建物や設備機器における配管の流れ、設置順序、構成要素、位置関係などを示す図面です。平面図では、真上から見た姿のみを記入しますが、配管系統図には平面図には含まれない情報まで盛り込まれます。
設備部品や機器の詳細をすべて書き込むことは難しいため、一般的には簡略化された記号を用います。水道など液体の配管図面には、記号で構成された配管系統図と、補足する構成部品の一覧表が記載され、組み合わせて情報を正しく読み取ることが可能です。
水道管以外にも電力系統図や弱電系統図、ダクト系統図など、設備の設計管理には欠かせない図面の1つです。
配管工事の流れ
配管工事と一口に言っても、さまざまな種類があり、それぞれで工事の流れは異なります。ここでは、水道工事のおおまかな流れについて簡単に解説します。
戸建て住宅における水道配管工事
戸建て住宅を新築する際の水道配管工事の主な流れは、以下の通りです。
- 申請業務(給水装置申請、排水設備(新・変更)申請など)
- 基礎貫通スリーブ工事
- 床下配管工事
- 宅内配管工事(仕込み)
- 外部配管工事(上水道管・下水道管との接続)
- 衛生設備機器の取付工事
- 通水検査・水圧テスト
基礎内や床下、壁や天井の裏など、基礎工事から竣工までの間、それぞれの箇所で適切なタイミングで配管を設置しなければなりません。そのため、現場の進行具合に合わせて施工することになります。
水道配管の交換工事
水道工事に道路工事が伴うケースでは、通行止めや交通規制が伴うため、管轄の交通局へ申し出て許可を得ておく必要があります。また、地震など災害の影響で漏水が発生した場合や、経年などにより交換のタイミングが訪れた際には、更新(交換)工事が行われます。
道路工事を伴う水道配管の交換工事の手順は以下の通りです。
- 試掘
- 仮設管の設置
- 仮設給水切替
- 既設管の撤去
- 新設管の設置
- 給水切替
- 仮設管の撤去
- 路面復旧
通常は、通行止めの状態を続けるのではなく、工事の段階ごとに道路を一旦埋戻し、新たに掘り起こして施工を進めるやり方が一般的です。そして最後に道路を元の状態へと戻して完了です。
配管図面を作るときの注意点
配管図面は他の施工図面とは異なる特徴を持つものもあり、作成する際にはいくつか気をつけるポイントがあります。ここでは、配管図面を作るときの注意点について解説します。
各パーツの寸法など必要な情報を明確にする
配管工事で使用する各パーツの寸法や向きなど、必要な情報を明確に記載することが大切です。工事で使用するパーツは、図面に従って事前に加工するため、どこに使用するパーツか、寸法や向き、貫通部、末端などを明記し、ルートをわかりやすく記載しましょう。
図面だけではわかりづらい部分や、間違えそうな部分には補足説明を記載することも大切です。図面に必要な情報が揃っていない、もしくは情報が間違っている場合などは、現場で改めて基準を探し、寸法を追う、もしくは現場監督に連絡を取る、といった手間がかかります。
無駄な時間が増え、作業効率が低下してしまう恐れがあるため、必要な情報を正しく、漏れなく記載することが重要です。
配管図面の見方を統一する
複数人での作業に備えて、配管図面の見方を統一しておくことも大切です。図面を見るときの考え方に「見上げ」と「見下げ」などの種類があります。見上げというと、天井を見上げた際の配管の位置を示しており、見下げの場合は下の階の天井配管という見方です。いずれかに統一しておくことで、作業時にズレや間違いがなくなります。
戸建て住宅の水道設備などでは1人で作業できるケースも多いですが、ビルや施設など広い現場では数人のスタッフで進める必要があります。また、建築図面のなかには見上げ図や伏せ図などの名称で見方が決まっています。見上げなのか、見下げなのかを改めて統一しておくことで、作業者が共通の認識に基づいてスムーズに作業でき、業務効率化につながります。
古い図面をすぐに捨てない
配管図面を仕上げた後、古いバージョンの図面を捨てずに保管しておくことをおすすめします。どのような経緯で変更になったのか、必要なタイミングで見返せるように変更前の図面も保管しておくことで、現場の状況に応じて臨機応変に図面を変更できます。
実際に現場で配管ルートを確認する
ある程度の規模の現場では、設計担当者が現場に足を運ぶことなく図面を作成するケースも珍しくありません。ただ、図面だけだと問題ないルートでも、実際の現場で梁や鉄骨、間仕切り下地などの障害があり、図面通りに配管できない可能性が出てきます。
また、他の配管や設備機器と干渉してしまう場合もあります。特に排水配管や通気配管は、勾配を取らなければならず、施工の途中で障害に気づいて最初からやり直しとなってしまうことも考えられます。
最初から図面通りに施工できるとは限らないため、現場を見て明らかに通らない場所や足場がない箇所などを見つけておくことが対策になります。
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まとめ
配管図面は、水道・ガス・電気など生活に不可欠なインフラを構成する配管を敷設するための図面です。住宅やビルなど多くの現場では、さまざまな用途の配管が適切に設置される必要があるため、正確な配管情報が記載された図面が求められます。
ただし、当初の設計通りに現場で納められるとは限らないため、状況を的確に把握し、柔軟に対応する上でも図面情報が大切です。精度の高い配管図面を効率的に作成、編集するためにもCADソフトの使用をおすすめします。
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