毎日の生活で使用している水は、水道配管を通って蛇口へ到達します。水道の本管というと、給水所から出ている水道配管を指し、水を配る配水管から住宅や建物へ水を引き込む工事を本管工事と呼ぶことがあります。
本記事では、水道本管工事の流れや、水道の配管工事に必要な資格などについて解説します。本管工事を含め、水道工事に従事する上で重要な情報を網羅していますので、ぜひお役立てください。
水道の本管工事とは?
水道の本管工事とは、給水所から配水区域に水を送るための水道配管の工事です。配水管(本管)は一定の水圧を均等に保ち、地中に張り巡らされています。天災や事故の際にも断水を最小限に抑えられるよう配慮されています。
水道工事には、給水管の引き込み工事から屋内配管工事、トイレなど下水道の排水設備工事までいくつかの種類に分けられます。住宅やビルの新築時に建物へ水道を引き込む工事を本管工事と呼ぶ場合もあります。
水道の本管工事の流れ
水道の本管工事は、道路の下にある水道管を扱うため、多くの工程を含みます。おおまかな流れは以下の通りです。
- 試掘工
- 仮設管布設工
- 本管布設工
- 洗管通水作業
- 給水管布設工
- 道路構造物復旧工
- 舗装復旧工
- 区画線工
それぞれのステップについて詳しく解説します。
1. 試掘工
はじめに、道路の中にある配管や設備の埋設状況を調べます。水道管以外にも、電気やガス、電話などさまざまな配管が道路下に埋設されています。正しく把握していないと、工事の際に関係ない配管に影響が及ぶ可能性があるため、事前調査は重要です。
図面通りに埋設されているかを調べ、記録するために工事区間内を点々と掘ります。平均で10箇所ほどですが、20〜30箇所掘る場合もあります。図面に記載されていない状況もここで確認し、設計通りに水道本管工事ができるかを検討します。
2. 仮設管布設工
本管を布設する際に、一時的に給水するための仮設管を布設する工事です。仮設管を設置することで、周辺地域の断水を最小限に留めることが可能です。仮設管は地中の深さ約30〜80cmほどに埋設されます。
仮設管の布設が終わると、本管の水の流れを止め、仮設管に水を流す作業を行います。制水弁と呼ばれるバルブ操作で水の流れを切り替えるため、早ければ2日程度で完了する場合もあります。
3. 本管布設(布設替)工
本管工事のメインとなる本管の布設作業です。地中の深さ約1.2mほどを標準とし、1.5m〜3.0mほどまで掘り下げるため、大掛かりな工事になります。1日ごとに約6m〜15mずつ進めるのが一般的です。掘り下げる深さや配管の太さは現場によって異なります。
4. 洗管通水作業
仮設管と本管の布設が完了したら、水を引き込み(通水し)内部を洗います。消火栓や仮の排水口を使って、排水しながら繰り返し洗浄します。洗浄の完了後は、水質・圧力検査など各種試験を行って、問題がないことを確認してから通水します。
検査は水道局監督員が実施します。検査で水圧が下がる場合、どこかに漏れが生じている可能性があるため、工事をやり直す場合もあります。
5. 給水管布設工
本管から各家庭や建物につながる給水管を接続するための配管をつなげます。 給水管の布設工事では、一時的に断水します。 給水管の布設が完了した後は、不要になった仮設管は撤去されます。
6. 道路構造物復旧工
工事で一時的に撤去した道路構造物を、元の場所に移動する作業です。歩車道境界ブロックやL型側溝、点字ブロックなど、工事に伴い移動したものを戻します。
7. 舗装復旧工
本管の布設や道路構造物の復旧が終わったら、仮舗装していた道路をきれいに舗装します。
8. 区画線工
工事の際に消してしまった道路上の線や記号を、改めて設置する作業です。
本管工事は、さまざまな工程があり、完了までに長い期間を要します。また、道路を3〜7回ほど掘り起こし、元に戻す作業を繰り返すため、交通規制が入ります。
配管工事に必要な資格
水道配管工事を請け負う指定事業者となるためには、有資格者の在籍が必要です。また、水道管の種類によっても必要な資格の種類が異なります。ここでは、水道配管工事で取得が求められる主な資格を紹介します。
給水装置工事主任技術者
「給水装置工事主任技術者」は、給水装置の工事を行うために必要な国家試験です。給水装置工事主任技術者試験に合格し、厚生労働大臣より免状の交付を受けた人が保有者となります。
資格を取ることで、水道工事の事前調査や施工計画、施工管理、検査に加えて、作業員への指導などが可能です。水道工事では給水装置工事主任技術者の介入が必要な工程も多いため、水道配管工事において重要な役割を担っています。
水道技術管理者
「水道技術管理者」は、上水道や専用水道など水道事業において、必ず設置しなければならないと定められている責任者資格です。水道に関して一定以上の知識や実務経験を必要とし、一定の受験要件が設けられています。
安全な飲料水を供給するための水道の維持管理や給水開始前の水質検査、給水の緊急停止、給水停止命令による給水停止などが主な業務です。
下水道排水設備工事責任技術者
「排水設備工事責任技術者」は、排水装置工事の計画や施工、メンテナンスまでを一貫して行える資格です。下水道排水設備の工事を担う指定工事店に、有資格者は1名以上在籍する必要があります。
管工事施工管理技士
「管工事施工管理技士」は、管工事のスペシャリストとしての証明となる国家資格です。水道配管をはじめ、空調設備やガス管、ダクト、浄化槽など幅広い配管工事に必要なため、需要の高い資格でもあります。
現場の工程における安全管理や施工管理において、管工事施工管理技士の有資格者が活躍します。
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まとめ
水道の本管工事は、道路の下を掘り起こし、配管を適切に処理した後埋め戻すまでの一連の工程を含みます。水道配管工事を行うために必要な資格もあるため、資格取得により安定的な受注につながります。また、水道配管工事における業務効率化により、現場作業の品質を向上させることが可能です。
水道配管工事についてよくある質問
水道本管工事はどのくらいの期間で完了する?
本管からの引き込み工事の場合、接続作業は1日程度で完了するケースがほとんどです。敷地の前面道路がアスファルトの場合、採掘した後に埋め立てと舗装があるため、数日かかる可能性もあります。
水道引き込み工事は、申請書類を提出し、自治体や国の認可を受ける必要があります。申請から手続き完了までは約1〜2週間ほどが目安です。
水道配管工事のおおまかな費用は?
水道引き込み工事の費用は、約30〜50万円が目安です。ただ、水道本管から敷地までの距離や経路などによって費用が変わる場合があります。一般的には、水道管の引き込み1mあたり1.5万円前後かかるとされています。本管から敷地までの距離が遠いほど、工事費用は高額になります。
水道配管工事は無資格で受注できる?
水道配管工事は、自治体が認可した「指定給水装置工事事業者」もしくは「指定排水設備工事事業者」が受注できます。指定事業者になるためには、有資格者の在籍が条件です。上水道の工事には「給水装置工事主任技術者」、下水道工事では「排水設備工事責任技術者」の保有者が在籍している必要があります。
水道本管を調べる方法は?
水道本管が布設されている場所を確認したい場合、最寄りの水道局に問い合わせてみましょう。自治体によっては、水道管の埋設状況をインターネット上で公開しています。調査したい場所を管轄する水道事務所や、役所の窓口でも確認を依頼できます。
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