配管はさまざまなシーンで活用される部材であり、その種類は多岐にわたります。そのため、設置場所や用途、内部を流れる流体などの条件に合わせて、適切なタイプを選ぶ必要があります。
本記事では、配管の種類について詳しく紹介するとともに、配管選びにおけるポイントなどについて解説します。建設業界で用いられる配管の種類について理解を深めるために、ぜひご覧ください。
流体による配管の違い
配管内部を流れる物質のことを流体と呼びます。配管の流体には「液体・気体・粉体・粒体」などの種類があり、それぞれで呼び方も異なる場合があります。ここでは、液体を流すための液体配管と、気体を流すための気体配管についてより詳しく解説します。
液体配管(水・油など)
液体を流す液体配管の代表的なものには、水を流す「水配管」と油を流す「油配管」の2つがあります。水配管の流体として、飲料水や雑用水、排水、熱源水などが含まれます。自然環境の影響による劣化や冬季の凍結による破損といったトラブルに注意が必要です。
また、水が管内を流れる際に乱流が発生し、内部摩耗によって腐食が発生する可能性もあります。そのため、配管の長さや勾配、レイアウトなどの条件をよく検討することが重要です。構造上の理由などで空気だまりが生じる場合は、空気抜き弁の設置も有用です。
油配管は、石油などのエネルギーの伝達(油圧装置)や潤滑油などの給油(供給装置)に用いられます。水配管よりも高い圧力がかかる上、腐食性が高い流体を流すため、耐圧性や耐食性が求められます。
気体配管
気体配管の流体には、水蒸気、冷媒、特殊ガス、燃料ガス、空気(圧縮空気)などがあります。また、真空配管も気体配管の一種です。
ガスを流す配管はガス管と呼ばれ、埋設部の腐食対策としてポリエチレンで被覆した樹脂被覆鋼管やポリエチレン管を使用します。水蒸気を流す配管は、強い圧力がかかり、高温になるため、耐性のある鋼管が用いられます。身近な気体配管には、エアコンの室内機と室外機の間で冷媒(フロン)を流す冷媒配管があります。
配管の素材の種類
配管に使われる素材には、大きく分けて「金属」と「非金属」の2種類があります。また、それぞれに多くの種類があり、流体や用途、シーンなどによって使い分けされています。ここでは、主な配管の素材について解説します。
金属管
金属管は、炭素鋼や合金鋼、ステンレス、アルミニウム、銅といった金属をベースとし、添加物を配合した素材で作られています。主な金属管の種類とその特徴について見ていきましょう。
炭素鋼鋼管(SGP)
炭素鋼鋼管(SGP)とは、炭素鋼を素材とする配管です。ガス管の呼び方で広く知られており、素材である鉄と炭素の合金(炭素鋼)は、炭素の含有量によって強度や腐食性を調節できます。SGPには通常、炭素含有量が0.02%〜2.14%までの合金が採用されています。
また、他の素材より安価で、流体の種類によらず、さまざまな配管に活用できるため、最も一般的な配管素材の1つです。SGPの代表的な用途としては、ガスや空気、水、油、蒸気など圧力が低めで腐食性のない流体を扱うプラント配管があります。
炭素鋼鋼管は大きく分けて「白菅」と「黒管」の2種類があります。白菅(白ガス)は、配管の内外に亜鉛加工(熱処理)が施されたもので、銀色に近い色合いが特徴です。圧力が比較的低い気体などの流体に用いられます。
黒管(黒ガス)も、白管と同様に圧力の弱い蒸気などの流体を流す配管として採用されています。ただ、見た目は黒さを帯びているのが特徴です。
合金鋼鋼管
合金鋼鋼管は、炭素鋼にクロムやニッケル、モリブデンなどを添加した「合金鋼」を用いた配管です。合金元素を素材に配合することによって、より低温もしくは高温にも耐えうるよう調整できます。そのため、熱交換用の配管システムや加熱炉などでも採用されています。
特定の合金鋼でしか仕様を満たせないような、特殊な環境やシーンで用いられるケースが多く見られます。具体例は、水管や煙管、過熱器管、コンデンサ管などです。
ステンレス鋼鋼管
ステンレス鋼鋼管は、10.5%以上のクロムを含むステンレスの合金鋼(SUS)を素材とする配管です。優れた耐腐食性と強度を持ち、薄肉化して使いやすい傾向があります。また、重量は炭素鋼鋼管の約3分の1と軽量で、運搬や施工がしやすく、リサイクルも可能です。
過酷な環境や工業用の配管に適しています。用途に応じて多くの種類に分けられますが、給水や給湯、排水といった配管には「SUS304TPD」「SUS315J1TPD」「SUS315J2TPD」などが用いられます。
ただし、炭素鋼より材料そのものが高価な上、加工にも高度な技術を要するため、コストは高くなります。
アルミ管
アルミニウムを用いた配管は、鉄やステンレスなどに比べて軽量で、錆びにくい点が特徴です。アルミニウムの純度が99%以上でと強度が低くなるため、ジュラルミンなどの添加物を使用して、強度を高めたものが採用されています。
主に、熱交換器や船舶などの他、照明器具や化学工業用タンク、導電材などに用いられています。また、機械装置の軽量化などにも活用されています。
銅管
銅管は、水や土に対する耐食性が高く、長期間使用しても劣化しにくい点が特徴です。また、亜鉛やスズ、金、銀などを加えることで、強度を高めることもできます。殺菌作用もあるため、エアコンの空気や冷媒などの流体の配管から、飲料水用配管まで幅広く活用されています。
さらに、加工がしやすく、現場で曲げる、切断するといった作業も簡単に行えます。複雑な建物構造で配管の配置やレイアウトに柔軟性を持たせたい場合にも役立つでしょう。
ただし、銅自体が他の素材よりも高価なため、大規模な施設で使いたい場合にはコストがかさむ可能性があります。
亜鉛メッキ鋼管(SGPW)
亜鉛メッキ鋼管(SGPW)は、水道用配管として使用されていた素材ですが、1997年にJISが改正され、現在は飲料水に使用できなくなっています。主な用途としては、排水・消火・空調などの水配管です。
非金属管
ここでは、樹脂管や塩ビ管などの非金属管の種類を紹介します。
樹脂管
樹脂を素材とする配管は、樹脂管と呼ばれます。薬品への耐性が高く、酸性の土壌に埋設しても腐食する心配がないため、汚水の酸アルカリの影響を受けにくい点が特徴です。また、材質が軽量かつ安価で、切断・接続といった加工も簡単に行えます。
ただし、耐熱性が低い点や、屋外に設置した場合の紫外線による劣化といった懸念点はデメリットです。樹脂管の中で最も一般的な「塩ビ管(硬質ポリ塩化ビニル管)」は、大規模な建物の埋設部分や一般住宅などでも使用されています。
塩ビ管は、おおまかに「薄肉管(VU)」「水道用(VP)」「水道用耐衝撃性(HIVP)」「水道用耐熱性(HTVP)」の4種類に分けられます。塩ビ管の他にも、薬品や廃液のラインでよく用いられる「フッ素樹脂管(PVDF)」や、水道や工業用排水にも使われる「ポリ塩化ビニルライニング鋼管」などの種類があります。
耐火二層管
耐火二層管は、前述した塩ビ管の外面をモルタル繊維で覆った配管です。内面は腐食に強い塩化ビニル素材、外面は耐火性のあるモルタル繊維という二層構造で、防火区画貫通箇所を中心に利用されています。
架橋ポリエチレン管
架橋ポリエチレン管は、大別すると樹脂管の一種ですが、国が定める環境ホルモンの基準をクリアしており、有害な化学物質の排出がほぼない点が特徴です。また、一般的な使用環境での耐用年数が約30年と長く、地震で破断しにくいため、一般住宅や集合住宅の給湯管や給水管などに採用されています。
また、軽量で、管同士を差し込むだけで簡単に取り付けられるため、取り扱いがしやすい点もメリットです。
ポリブテン管
ポリブテン管は、ポリオレフィン系の樹脂「ポリブテン」を用いた配管です。低温・高温どちらにも強く、保温性にも優れているため、給水、給湯、冷暖房用などに採用されています。
軽量で耐薬品性も高いため、取り扱いやすい点も特徴です。主に床暖房配管や温泉の温水配管や、温室、ビニールハウスの暖房配管などに用いられています。
コンクリート管
コンクリート管は、コンクリートを素材とする配管です。種類が多いですが、大別すると「無筋コンクリート管」と「補強コンクリート」の2種類があります。耐久性があるため、下水道や農業排水用として用いられています。
配管の素材選びのポイント
配管を設置する際には、内部を流れる流体やかかる圧力、設置する環境などの条件を総合的に踏まえ、適切な素材を選ぶことが重要です。ここでは、配管の素材選びにおけるポイントを紹介します。
素材の特性をよく理解する
配管の種類について、金属・非金属に分けて紹介しましたが、上記以外にも細かな種類の配管が存在します。用途に応じた材質や形状の配管を選ぶためには、素材それぞれの性質をよく理解している必要があります。
費用対効果を考える
配管の素材選びにおいて、コストパフォーマンスも重要な要素です。最も費用対効果が高いとされる種類は、塩ビ管です。塩ビ管は、軽量かつ安価で、取り扱いのしやすい傾向があります。また、腐食しにくく長期間使えるため、メンテナンスの負担も軽減されています。
ただ、温度変化や強度の耐性が低めで、使う場所や環境によっては品質が不安定になりやすいため、他の素材も検討した方が良いでしょう。
まとめ
配管の種類は多数ありますが、内部を流れる流体の種類により「液体配管」「気体配管」といった呼び方をします。また、配管の素材は「金属」「非金属」の2種類に大別され、それぞれに細かな種類が存在します。
配管の素材によってメリット・デメリットや用途、メンテナンスのしやすさが異なります。また、建物の安全性にも影響を及ぼすため、使用環境や流体などの条件をトータルで考慮し、最適な素材を選ぶことが重要です。
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