水道設備工事は、日常生活に欠かせないライフラインを確保するための工事です。住宅やビルの新築工事やリノベーションなど、あらゆるシーンで水道設備工事が行われますが、工事の種類や内容によっては有資格者だけが行えるものもあり、正しい知識が必要です。
本記事では、水道設備工事の種類や工事内容、水道設備工事を行うための資格について解説します。
水道設備工事とは?
水道設備工事とは、名前の通り水道設備を設置するための工事のことです。具体的には、水道メーターを境界線とし、自治体などの水道局が管轄するものと、民間の専門業者が管轄するものの2種類に分かれます。
水道メーターより道路に近い側の水道管は、水道局が管理するため、公共工事に該当します。一方、水道メーターより建物に近い側の水道管は、民間の業者が工事を行います。工事担当者が異なるため、配管の破損などの不具合では修理費用の有無などが変わります。
つなぎ方の間違いなど、給水管の施工に少しでもミスがあると、漏水や配管トラブルや、飲料に適さない水が出てしまうといった事故につながるリスクがあります。そのため、水道設備工事は専門の事業者が行うよう定められています。
水道設備工事の種類・仕事内容
水道設備工事の種類には、「給水管引込工事」「屋内配管工事」「下水道排水設備工事」の3つがあります。それぞれの工事内容を詳しく解説します。
給水管引込工事
給水管引込工事は、道路に設置されている配水管から給水管を敷地内に引き、水道メーターを設置する工事のことです。水道設備が必要な土地に面した道路下の配水管から、建物の敷地内に給水管を引き込み、止水栓や水道メーターを設置します。
住宅や施設の新築工事をはじめ、大きな直径の給水管に取り替える場合や、水道管の素材を変更する場合は、給水管引込工事が必要です。各自治体が管轄しているため、工事には自治体の許可を要します。工事の費用は通常、施主が負担します。
配水管から給水管を引く方式は、「直接式給水方式」「受水槽式給水方式」「中高層直結式給水方式」の3種類に分けられ、建物の規模や条件に応じて適切な方式を採用します。戸建て住宅では直接式給水方式、マンションやビルなどの規模の大きな建物では受水槽式給水方式や中高層直結式給水方式が主流です。
屋内配管工事
屋内配管工事は、水道メーターから浴室やキッチン、洗面台、給湯器などの水回り設備の蛇口に配管を接続する工事のことです。住宅などの新築物件をはじめ、キッチンや洗面台などの場所を変更、追加するリフォームでも屋内配管工事が行われます。
トイレや排水管のつまりといった敷地内の水回りのトラブル対応も、室内配管工事に含まれます。給水管引込工事と同様に、屋内配管工事も自治体の指定を受けた水道設備工事会社が行うよう定められています。
下水道排水設備工事
下水道排水設備工事は、排水口から汚水ますへの配管(排水管)を行う工事のことです。敷地内にある水回り設備の排水口から、公共の汚水ますに続く配管を設置して、下水が適切に排出されるようにします。
屋内配管工事で蛇口の位置を変更する場合には、下水道排水設備工事を行い、排水口の位置を変更する必要があります。また、キッチンやトイレの排水口の先に汚水ますや浄化水槽を設置する作業も、下水道排水設備工事に該当します。
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水道設備工事に有効な資格と難易度
水道設備工事の多くは、自治体が認定する専門業者が担当します。また、工事内容や工事現場によっては、有資格者の派遣や担当が必要です。ここでは、水道設備工事を行うために有効な資格とそれぞれの概要、難易度などについて解説します。
給水装置工事主任技術者
給水装置工事主任技術者は、給水装置工事の技術的指導監督や給水装置の技術的管理などを行うための国家資格です。給水装置工事の事業者が水道事業者から水道法に基づく指定(指定給水装置工事事業者)を受けるためにも必須とされています。
水道設備工事の作業自体は、資格を持たない人でも対応できますが、監督者として給水装置工事主任技術者の資格保有者を現場に派遣することが事業者に対して義務付けられています。また、施工後の給水装置の検査は、資格保有者が立ち会うよう定められています。
試験科目は、公衆衛生概論や水道行政、給水装置の概要など8科目で構成されています。受験資格として、3年以上の実務経験が必要です。
実務経験に該当しない業務にもかかわらず受験してしまうと、場合によっては虚偽の申請とみなされ、受験の取り消しや会社名の公表といった対処がなされる可能性があります。受験案内に記載されている実務経験の具体例をよく確認しましょう。
なお、試験科目の一部免除制度があり、1級管工事施工管理技士もしくは2級管工事施工管理技士の資格を取得している人は、合格証明書をもって一部免除を申請できます。
- 受験資格:給水装置工事に関する3年以上の実務の経験を有する方 など
- 受験手数料:21,300 円(非課税)
- 合格率:31.0%(令和4年度)
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士は、配管工事の施工計画の作成や、工程・安全・品質の管理をはじめとする業務を行うための国家資格です。建設業法第27条に基づき、国土交通大臣指定機関が実施する国家試験(管工事施工管理技士技術検定)に合格することで、資格を取得できます。
管工事施工管理技士には、1級と2級の区分があります。専任技術者(営業所ごとに置く専任の技術者)と主任技術者のみに就任できますが、1級になると主任技術者と監理技術者、専任技術者になることが可能です。
専任技術者などは、建築基準法で現場に常駐するよう定められており、管工事施工管理技士は建設現場に欠かせない配管工事のエキスパートといえます。冷暖房設備や空調設備、ガス管配管設備、浄化槽設備、上下水道配管設備、給排気ダクトなど、あらゆる建設現場における管工事に携わることができます。
各級は第一次と第二次試験で構成されており、2級の第一次検定は17歳以上であれば受験可能ですが、1級は2級合格者あるいは規定の受験資格を満たした人のみが受験できます。
- 受験資格:大学の指定学科を卒業し、卒業後3年以上の実務経験を有する方 など
- 受験手数料:
【1級】第一次検定10,500円、第二次検定10,500円
【2級】第一次・第二次検定10,500円、第一次検定 5,250円、第二次検定5,250円
- 合格率:
【1級】第一次約3~5割、第二次約5〜7割
【2級】第一次約5割、第二次約5割
下水道排水設備工事責任技術者
下水道排水設備工事責任技術者は、下水道排水設備工事を行うにあたって、必要な専門知識技能を有すると認められた場合に受けられる資格です。各都道府県市区町村で実施される排水設備工事責任技術者試験に合格し、資格を登録される必要があります。
下水道排水設備工事は、各自治体の条例によって登録された指定業者のみが対応できる工事です。資格を所有している技術者から指定業者を選任することが決まっているため、工事を請け負うためには資格取得は必須です。
「下水道法令」「技術(下水道排水設備指針と解説)」から、マークシート形式で合計30問出題されます。合格率は約6割で、上記2つの国家資格よりも難易度は低いといえるでしょう。
排水設備工事責任技術者に認定された後は、5年ごとに資格更新が必要です。更新手続きを行わない場合は資格抹消となるので注意しましょう。受験資格は、各自治体や都道府県によって異なるため、受験する自治体に直接問い合わせる必要があります。
- 受験資格:各自治体や都道府県によって異なる
- 受験手数料:18,000円(京都府の場合)
- 合格率:約3〜5割
水道技術管理者
水道技術管理者は、水道施設を良好な状態に保ち、衛生かつ安全な飲料水を提供するために、施設の維持や修繕に必要な技能を認定する資格です。主な業務には、水道施設の検査や水質検査、塩素消毒の実施、給水停止の判断に加えて、浄水場に勤める従業員の健康診断なども含まれます。
上水道や簡易水道、専用水道の設置を含む水道事業を行う場合、専任技術者として水道技術管理者を設置することが義務付けられています。管工事施工管理技士には1級と2級があり、建設業者が営業所を設置する際に専任技術者として作業に従事できるのは、1級取得者です。
資格試験はなく、一定の学歴や規定の実務経験を満たすことで任命されます。なお、事業者自らが水道技術管理者になることも可能です。
- 受験資格:高等学校を卒業した方 など
- 受講料:260,000円
- 合格率:約9割
まとめ
水道設備工事は、わたしたちの日常生活に欠かせない水を扱う重要な工事です。給水管引込工事や屋内配管工事、下水道排水設備工事といった種類があり、工事に携わるために取得が必要な資格も存在します。
現場の専任責任者などの需要の高い資格を取得すると、キャリアアップにもつながるでしょう。水道設備工事に必要な技術や知識を身に着けて、現場で活躍するためにも今回紹介した資格の取得も検討してみてください。
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