現場で使用するヘルメットは作業員の安全を守るために欠かせない道具です。最近では種類も多様化していますので、メーカーごとの特徴や機能性、デザイン性などを整理して知っておきたいという方も多いでしょう。この記事では、現場の作業員の方やヘルメットの購入を決定する経営層の方に向けて、主要なヘルメットメーカーの特徴についてまとめて解説します。
現場ヘルメットとは?選ぶうえで知っておきたい基礎知識
現場ヘルメットとは、工事現場などで作業従事者の頭部を保護するためのヘルメットのことです。JISの呼称では「安全帽」、法令上は「保護帽」とされています。労働安全衛生規則で定められた場所で作業を行うときは、厚生労働省の「保護帽の規格」を満たし、型式検定に通ることで得られる「検定合格標章」を貼付した上で現場ヘルメットを着用することが義務付けられています。
現場ヘルメットの構造
現場ヘルメットの構造は「帽体」と「あご紐」、内部の「ハンモック」と「ヘッドバンド」に分かれ、それぞれに大事な役割があります。
帽体:ヘルメットの外側部分のことで、落下物などから頭部を保護します。
あご紐:ヘルメットと頭部全体を固定し、作業中に脱落するのを防ぎます。
ハンモック:ヘルメットを頭部に保持するための部品。帽体と頭部との間に十分な空間を作り、飛来・落下物からの衝撃を和らげるのに重要な役割があります。
ヘッドバンド:頭部の大きさに合わせてサイズを調整し、帽体と頭部を固定します。
このほか、種類によっては「衝撃吸収ライナー」と言われる発泡スチロール製の半球状のパーツが組み込まれています。着用者が高所から落下したり頭部に落下物や突起物を受けたりすると、内部のハンモックが伸び、帽体との間にスペースを作ることで衝撃を吸収します。ライナーにはさらに衝撃をやわらげる効果があり、ダミー人形の頭部を落下させる実験では3分の1にまで衝撃が減ったと報告されています。
ヘルメットの形状の種類
ヘルメットの形状は、基本的に「MPタイプ」「野球帽タイプ」「アメリカンタイプ」の3種類に分けられます。
MPタイプ:Military Policeの頭文字を取ってMPタイプと呼ばれています。元々は軍人が使用していたシンプルな形状のヘルメットです。昔ながらの一般的に普及しているヘルメットで、コンパクトで引っ掛かりが少なく、視認性も高いのが特徴です。価格は安い傾向にあります。
野球帽タイプ:ヘルメットの前部分だけにツバがあり、側面や背面はツバがないタイプです。軽量でコンパクトのため動きやすさを損ないません。
アメリカンタイプ:前面にせり出したツバが特徴のヘルメットです。デザイン性や機能性が高い製品が多く、建設業界でも広く採用されています。ツバが透明で視認性の高いヘルメット、通気孔付きで熱中症対策に配慮したヘルメットなどもあります。
現場ヘルメットの素材の種類
現場ヘルメットを選ぶ上では素材が重要です。材質は熱硬化性樹脂製の「FRP製」と熱可塑性樹脂製の「ABS製」「PC製」「PE製」の4つに大別され、以下のような特徴があります。
FRP製:ポリエステル樹脂をガラス繊維で強化した素材です。耐燃性、耐熱性、耐候性に優れるものの、リベット穴より通電するため耐電性はありません。耐有機溶剤性能も備えています。
ABS製:アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレンという3つの物質を化学結合して作られた樹脂です。耐電性に優れているものの、高熱環境では推奨されていません。耐有機溶剤性能はありません。
PC製:ポリカーポネート樹脂のことです。基本的にABS製と同じ性能ですが、比較すると耐燃性、耐熱性、耐候性に優れています。
PE製:ポリエチレン樹脂のことです。耐有機溶剤性と耐電性に優れ、耐候性も高いものの、耐燃性と耐熱性は劣ります。
なお、購入後はそれぞれの素材の耐用年数にあわせて買い替えなければなりません。一般にはFRP製で使用開始後5年、ABS・PC・PE製で3年が交換時期とされ、汗などで傷みやすいヘッドパッドやあご紐は1年を目安に交換が推奨されています。とはいえ現場ヘルメットは消耗品ですので、不具合が見られる場合はすぐに買い替えましょう。
おすすめの現場ヘルメットメーカー10選
役割と基本構造は同じでも、現場ヘルメットは近年、機能面においてもデザイン面においても多様化しています。ここでは現場でよく用いられている主要7メーカーをご紹介します。
ミドリ安全
ミドリ安全は、作業従事者のワークシーンや過去の事故事例の分析を通じて、実際的かつ安全なヘルメットを開発しているメーカーです。主力商品の「SC(セイフティ・キャップ)ヘルメット」は、従来のキャップ型よりも後部を広く覆うデザインになっているため、転倒時の後頭部への打撃に強く、前後からの衝撃にも、ヘルメットのズレや脱落を防ぐ「脱げ防止機構」で耐えられる仕様になっています。また、ベンチレーション機能付きのシリーズはヘルメットの上部に通気孔をあけることで空気の循環を良くし、作業に伴う頭部のムレを解消します。雨天時に嬉しいレインガード(雨垂れ防止機構)の付いたタイプもあり、全体として作業員の着用シーンに配慮したヘルメットメーカーと言えます。
主力商品は「SC-11B RAバンド・衝撃吸収ライナー付き スーパーホワイト(1,892円)」。2014年度にロングライフデザイン賞を受賞しています。
ミドリ安全:https://ec.midori-anzen.com/shop/c/cCA/
タニザワ
タニザワは安全性だけでなく、軽さや涼しさを追求しています。なかでも「エアライト」シリーズはシールドの無いタイプで365g、あるタイプでも430gと比較的軽量なうえに、全高も13.3㎝とコンパクトなので、ヘルメットが上方構造物に当たってしまう機会を格段に減らせます。また、シリーズ名にもなっている「エアライト」は発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーとは異なる内装体で、他社製品にはない優れた通気性を維持しています。こうした機能性に加えて、衝撃吸収の考え方を一変させた「サポートブロック」により、ハンモックの頭頂部にあるハニカム構造が飛来落下物の衝撃をやわらげる作りになっていますので、安全性も確保できているところがタニザワの特長です。
なかでも、軽くてコンパクトな「ST#01230-JZ(4,477円)」は、衝撃吸収が高く、通気孔により涼しさも確保しています。
タニザワ:https://www.tanizawa.co.jp/products/helmet/
進和化学工業
40年の実績を誇る進和化学工業はヘルメットの部品や構造を知り尽くしたメーカーです。製法へのこだわりもあり、遮熱ヘルメットとして知られる「Thermal-Resist(サーマルレジスト)」シリーズでは試験温度差がマイナス11℃という驚異的な数値を計測しています。帽体に練り込んだ遮熱樹脂により直射日光による熱を軽減するだけでなく、通気孔を利用したムレ防止構造により、着用者の熱中症リスクなどを軽減します。また、カラーバリエーションが豊富で、視認性を高めるスケルトンバイザーを付けた製品やマット塗装を施した製品もラインナップに含むなど、デザイン面にも特徴があります。短い納期での納品が可能な点もポイントです。
「SS-19V型(5,830円)」は、高機能な「Thermal-Resist」シリーズのなかでも手ごろな価格で購入できます。
進和化学工業:https://shinwakagaku.co.jp/
DICヘルメット
DICヘルメットは超軽量なだけでなく、強さも兼ね備えた製品デザインとして有名です。軽量化を徹底した「軽神(けいじん)」では、単三電池5本よりも軽い270gという業界最軽量を実現しています。シールドのない一般的なヘルメットの400gという重さを考えると驚異的な数値ですので、日常的に現場ヘルメットを利用する人ほど違いを実感できるでしょう。また、帽体と衝撃吸収ライナーを一体成型する「インモールド工法」によって、軽さだけでなく安全性も確保しています。通気孔の付いていないタイプでは耐電性もありますので、低価格で超軽量な唯一の電気用規格ヘルメットとしても人気です。その他にも「ヒートバリア」シリーズでは温度差マイナス12℃を実現するなど、性能の向上に余念がないメーカーです。
軽神は「AA17型(6,500円)」と、電気使用不可の「AA17-V(6,500円)」の2種類をラインアップしています。
DICヘルメット:https://www.dic-plas.co.jp/products/helmet/
加賀産業
加賀産業は軽くてかぶりやすいヘルメットを追求しています。加えて、製品であるKAGAヘルメットは品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001と環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の認証を取得した工場で製造されていますので、環境にも配慮したヘルメットとして知られています。ロングセラーを誇る「MNタイプ」はヘッドバンドの止め具がヘルメットの内部に収納されている発泡PEタイプを採用しており、カラーも10色から選べます。シンプルで使いやすく、とりわけ上を向く機会が多い電気・空調・屋根などの作業に最適です。その他にも防塵や眩しさから目を保護できるアイシールド付きの「FNⅡタイプ」なども親しまれています。
主力商品は、MPタイプの「MN-1(2,500円)」、アメリカンタイプの「FNⅡ-1(2,900円)」です。
加賀産業:http://www.kagahelmet.com/
トーヨー セフティー
トーヨーセフティーは暑さ対策や汗対策などの着用感にこだわったヘルメットを開発しているメーカーです。例えば送風機内蔵ヘルメットとして知られる「Windy Helmet(ウィンディ―ヘルメット)」では、正転(帽体内への吸気)と逆転(帽体外への排気)の両方を実現できるファンモーターを業界で初めて採用し、清涼感を直に感じられる作りになっています。もし汗をかいたとしても悪臭を予防できる消臭加工剤を使用しているため、新品時の着け心地を長く味わえるはずです。モーターの稼働時間も8時間と長保ちします。稼働には乾電池が必要ですが、モーターと電池を含めても総重量は572gほどなので、軽量化も考えて丁寧に作られていることを感じられるはずです。
防暑タレ付きヘルメット取付式送風機「No.7705(10,450円)」はアタッチメントが付属しているため、どんなヘルメットにも装着できます。
トーヨー セフティー:http://www.toyo-safety.co.jp/seihin/helmet_all.html
スミハット
スミハットは初めてフェノール樹脂を用いてヘルメットを実用化したり、アメリカンタイプを他に先駆けて商品化したりと、業界のパイオニアの位置を保ってきました。そのため安全性や耐久性だけでなく、信頼性の面でも定評があります。現在のラインナップには黒い艶消し加工を施した「KKC3&KKC」シリーズや、かぶり心地と涼しさを追求した「KKXシリーズ」などがあり、特に後者はシールド付きヘルメットの欠点である前部への傾きズレをフィット性と重量バランスの最適化によって克服した優れものです。その他にも透明バイザーシールド付きの最軽量クラスのモデルや、熱中症対策用のヘルメットなど、用途にあわせて一通りのラインナップを揃えています。
スタイリッシュな艶消し黒塗装の「KKC-B(8,400円)」、装着感に優れた「KKXC-A(7,800円)」、軽量モデルの「SAX2-A(5,900円)」などの低価格モデルから、クリアバイザー付きのハイスペックモデルまで幅広くラインアップしています。
スミハット:https://www.sumibe-tp.co.jp/product/met/
TRUSCO
TRUSCO(トラスコ)は、プロツールの専門商社トラスコ中山株式会社が運営する販売サイトです。「がんばれ!!日本のモノづくり」をテーマに掲げ、2022年4月時点で公開中のアイテム数は約281万点もあり、現場に必要なアイテムを網羅しています。自社ブランドのヘルメットは低価格モデルが多く、コスパの高さが魅力です。たとえば「TRUSCOヘルメット MP型 DPM-148W(1,414円)」「TRUSCOヘルメット 前ひさし型 DPM-0169W(1,932円)」は頭部をしっかりと守る衝撃吸収ライナー付きでも低価格を実現しています。また「TRUSCOダイヤル式防臭ヘルメット DPM-DH-W(4,140円)」はダイヤル式バンドを採用してサイズ調整が簡単にできるうえに、消臭効果のある素材を採用しているため快適に作業できるのが特徴です。
TRUSCO:https://www.orange-book.com/ja/c/index.html
モノタロウ
モノタロウは建設現場に必要なあらゆるアイテムを揃えたネットストアで、価格の安さと商品発送スピードの早さに定評があります。平日15時までの注文は当日出荷で対応するため、必要な材料や機材の購入は積極的に利用したい店舗です。また、1年間返品保証付きの安心感もあり、建設業界の強い味方と言えるでしょう。モノタロウで取り扱うヘルメットも低価格モデルの多さが特徴です。シンプル形状で重さ410gと軽量タイプの「MPタイプ ヘルメット 名入れ SS-101(1,309円)」、ヘルメット内部のムレを和らげる「ヘルメット 通気孔付 SS-830Z(2,299円)」などが主力商品で、他社製品よりも割安です。墜落時保護に対応していないヘルメットは1,000円未満の商品もあるため、用途にあわせて購入しましょう。
モノタロウ:https://www.monotaro.com/topic/monotarobrand/
PETZL
PETZL(ぺツル)はフランスのアウトドアブランドで、元々は登山家向けの商品を専門に扱っていましたが、現在はラインアップを拡大して建設現場でも活用できる商品も多く販売しています。取り扱うヘルメットはデザイン性に優れ、日本国内メーカーとは一線を画す形状です。たとえば「バーテックス A010AA(11,600円)」はハンモックが6点で支持されているため高い安定感を誇ります。調節ダイヤルにより頭部のフィット感を向上でき、あご紐を調節すると高所作業用としても使用できます。軽量タイプを購入するなら「ストラト A020AA(12,200円)」がおすすめです。軽量素材を使用したことで、バーテックスよりも55g軽い435gを実現しつつ、同等の性能を備えています。どちらも国内の産業用ヘルメットの規格に適合しているため、現場作業でも安心して使用できます。
PETZL:https://www.alteria.co.jp
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現場ヘルメットは定期的に交換し、安全性と快適性を確保しましょう
現場ヘルメットは作業員の安全を守るのはもちろんのこと、近年では清涼感・軽量性・快適さを求めて改良された製品が種々、登場しています。しかしどれだけ性能が改善されても、汗による傷みや経年劣化は避けられません。できるだけ定期的に新しいものと交換して、事故による頭部への衝撃を軽減するという本来の機能を保つことが大切です。選定にあたっては熱硬化性樹脂製か熱可塑性樹脂製かを判断して、現場に適したヘルメットを選ぶようにましょう。
現場ヘルメットについてよくある質問
ヘルメットのインナーだけ交換することも可能ですか?
インナー(内装品)のみの交換も可能です。実際あご紐やヘッドパッドなどは汗による消耗が激しいため、部品のみの販売もされています。
シールド付きヘルメットにはどんな種類がありますか?
シールドは破片や屑から顔を守るためのものですので、保護したい範囲にあわせて種類が異なります。安全性を重視するなら顔全体を保護できる大きなタイプ、目元だけでいいなら小ぶりで曇り止め加工がされたタイプ、軽さを重視したいならより小さめなタイプなど、用途や機能によります。ムレ防止に通気孔があいたものや、紫外線を99%防げるものもあります。
汗をかいて暑いけど夏場でも快適な現場ヘルメットはありますか?
これまでに紹介してきたように遮熱素材を用いた製品や送風機内蔵の製品、通気孔が多い製品など、夏場向けの現場ヘルメットは多数あります。体感温度が気になる場合は着用に伴う温度差が明示されているモデルを選ぶのもいいかもしれません。
現場ヘルメットに名前を入れてもらうこともできますか?
名入れ加工は可能です。一般的には数百円で、社名はもちろんのこと、個人名や緑十字、安全第一などを印刷できます。
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