人の生活において最も重要なインフラである水道の工事は、国家資格である「給水装置工事主任技術者」を保有する人だけに認可されています。給水装置工事主任技術者資格を取得することで、業界における信頼性や仕事でのやりがいなどさまざまなメリットが期待できるため、常に高い需要があります。
本記事では、給水装置工事主任技術者の概要から受験要項まで解説します。資格保有者の仕事内容や取得するメリットについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
給水装置工事主任技術者とは?
「給水装置工事主任技術者」とは、給水設備工事を行うために必須の国家資格です。給水装置工事事業者が、水道事業者から水道法に基づく指定(指定給水装置工事事業者)を受けるために必要な資格であり、給水装置工事を受注する企業にとっても極めて重要です。
給水装置工事主任技術者には、水道法に基づいた給水装置工事の詳しい知識や技術が求められます。厚生労働大臣が実施する国家試験に合格し、「給水装置工事主任技術者免状」の交付を受けた人のみが名乗ることができます。
給水装置工事主任技術者が活躍できる職場としては、水道事業者や水道工事会社だけでなく、建設会社やビル管理会社などがあります。管工事に関する実務経験を1年以上積んだ後は、管工事業の専任技術者・主任技術者へとステップアップすることも可能です。
給水装置工事主任技術者ができる仕事内容
給水装置工事主任技術者の仕事内容は、給水装置を適切に管理・維持するために必要な業務全般にわたります。給水装置工事主任技術者が行う職務について、「水道法第25条の4の3項」に以下のように規定されています。
水道法第二十五条の四
三、給水装置工事主任技術者は、次に掲げる職務を誠実に行わなければならない。
⒈ 給水装置工事に関する技術上の管理
2. 給水装置工事に従事する者の技術上の指導監督
3. 給水装置工事に係る給水装置の構造及び材質が第十六条の規定に基づく政令で定める基準に適合していることの確認
4. その他厚生労働省令で定める職務
引用元:水道法第25条の4の3項(e-gov 法令検索)
上記のように、給水装置工事主任技術者は、給水装置に関する調査や施工計画、現場工事までのすべての工程を担当することも少なくありません。具体的な仕事内容としては、以下のような業務が挙げられます。
- 老朽化した給水装置のメンテナンス
- 給水装置の清掃・交換
- 給水装置の点検作業や修繕、撤去
- 給水装置工事における給水装置の構造や材質の確認
- 給水装置工事の従事者への技術指導や監督
- 水道事業者との業務に関する連絡対応
給水装置工事主任技術者の試験について
ここからは、給水装置工事主任技術者の試験の概要について詳しく見ていきます。受験資格に含まれている実務経験の内容など、細かく規定されている部分もあるので、受験前によく確認しておきましょう。
受験資格
給水装置工事主任技術者試験を受験するために必要な受験資格は、「給水装置工事に関して3年以上の実務の経験を有する者」とされています。ここで言う実務経験に該当する内容については、以下の通り定められています。
法第25条の6第2項でいう「給水装置工事に関する実務の経験」とは、給水装置工事に関する技術上のすべての職務経験をいう。
技術上の職務経験とは、給水装置の工事計画の立案、給水装置工事の現場における監督に従事した経験、その他、給水装置工事の施工を計画、調整、指揮監督又は管理した経験及び給水管の配管、給水用具の設置等の給水装置工事の施行の技術的な実務に携わった経験をいい、これらの技術を習得するためにした見習い中の技術的な経験も含まれる。
なお、工事現場への物品の搬送等の単なる雑務及び給与計算等の単なる庶務的な仕事に関する経験は、同条でいう実務の経験には含まれないことに留意されたい。
上記「実務の経験」の具体例については、受験案内にも記載されています。また、給水装置工事を施工する下請け企業での業務も「実務の経験」に該当します。
一方で、給水装置ではない水道施設での建設工事業務や維持管理業務、メーター検針のみの業務といったものは、実務経験には含まれません。
実務経験に該当しない業務にもかかわらず、「実務経験がある」として申し込んだ場合、虚偽申請とみなされ、受験の取り消しや会社名の公表の可能性があるため注意が必要です。自分が受験資格を満たしているか、事前によく確認する必要があります。
試験項目
給水装置工事主任技術者試験の試験科目は、以下の8科目です。
- 公衆衛生概論
- 水道行政
- 給水装置工事法
- 給水装置の構造および性能
- 給水装置計画論
- 給水装置工事事務論
- 給水装置の概要
- 給水装置施工管理法
令和5年度の試験より、建設業法及び労働安全衛生法等に関する知識については、「給水装置施工管理法」から「給水装置工事事務論」へと移っています。過去問や書籍を使って勉強する際には注意しましょう。 各試験科目の主な内容や例については、ホームページにて公開されています。
試験項目のうち、「給水装置の概要」と「給水装置施工管理法」は、管工事施工管理の種目に係る、一級または二級の技術検定に合格している人は免除されます。
難易度・合格率
給水装置工事主任技術者は国家資格であるため、簡単に取得できる訳ではありませんが、合格率が数%という司法試験のような難関試験ではなく、しっかり勉強して準備を行うことで合格できる可能性は高まります。
給水装置工事主任技術者試験の配点は1題につき1点で、合格するためには以下3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 必修6科目※の得点の合計が27点以上
- 全8科目の総得点が40点以上
- 科目ごとに規定の点以上を獲得している
※必須6科目:公衆衛生概論、水道行政、給水装置工事法、給水装置の構造および性能、給水装置計画論、給水装置工事事務論
合格基準となる科目ごとの配点は、以下の通りです。
- 公衆衛生概論:1点
- 水道行政:3点
- 給水装置工事法:4点
- 給水装置の構造および性能:4点
- 給水装置計画論:2点
- 給水装置工事事務論:2点
- 給水装置の概要:4点
- 給水装置施工管理法:4点
合計の点数が合格ラインを超えていても、科目ごとの合格基準点を超えなければならない点に注意が必要です。
給水装置工事主任技術者試験の合格率は30%~40%前後です。過去3年の合格率は、以下のように推移しています。
- 令和2年度:43.5%
- 令和3年度:35.6%
- 令和4年度:31.0%
とはいえ、30%を下回った年もあるので、合格に向けて油断することなく準備しましょう。
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まとめ
給水装置工事主任技術者は、給水装置工事を行うために必須の国家資格であり、常に高い需要があります。試験の合格率は例年30%〜40%前後で、難易度もそこまで高くないものの、受験資格として規定の実務経験を3年以上積む必要があります。
水道業界や建設業界における転職や就職にも有利な給水装置工事主任技術者の取得に向けて、計画的に準備を進めましょう。
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