JWCADに限らず、CADで図面を作成していると「完成した図面に加筆・修正をする」という場面が多くあります。
それがCADソフトで編集できるデータなら、作業はそれほど難しくないでしょう。
しかし、JPEG画像やPDFファイル、紙の図面などで渡されると困ることが多いものです。
「これを1から自分で描かないといけないのか」と負担を感じる技術者は少なくないでしょう。
このような場面で役立つ手法がトレースで、これはJWCADでもしばしば用いられるものです。
ここでは、「CADのトレースとは何か」「JWCADで行うにはどうすればいいか」を解説していきます。
CADのトレースとは?2通りの方法を解説
CADのトレースとは、簡単にいうと「画像データからCADデータを作成する作業」です。
方法は2通りで、1つ目は取り込んだ画像を上からなぞる方法、2つ目はラスター/ベクター変換を行う方法です。
1つ目の方法では、作業自体は普通の作図と変わりません。
たとえば、長方形を描く場合は、まったく同じ動作をします。
通常との違いは、取り込んだ画像の長方形が裏にうっすら見えているため、作図が簡単という点です。
2つ目の方法では、普通の作図と根本的に違う作業をします。
簡単にいうと「ソフトを使ってボタン1つで」実行するものです。
たとえば、配管図ならソフトが「ただの線と点の集合体」として分析します。
そして、CAD上で線と点を使って描いたようなデータを瞬時に作成してくれるのです。
この方法だと作業は簡単になりますが、図面の精度は落ちます。
トレースという言葉の意味は、英語で「たどる」というものです。この語源から考えると、1つ目の方法が本来のトレースといえます。
ただ、最終的に目指すものが同じなので、後者もトレースと呼ばれることが多いものです。
CADのトレースは、JWCADでもそれ以外のソフトでも、ほぼすべて共通してこのような2つの作業のことを指します。
ラスター/ベクター変換とは?
ラスター/ベクター変換とは「ラスターデータをベクターデータに変換する」ことです。
ラスベク変換と呼ばれることもあります。この作業はCADソフトだけでなく、Illustratorなどの別分野のソフトでも行われるものです。
ラスターデータとは、通常の画像のように「もう自由に編集できないデータ」を指します。ベクターデータとは、作図中のCADの図形のように「自由に編集できるデータ」です。
ラスターは「ラスト=完結」の意味、ベクターは「ベクトル=方向」(編集途中)の意味と考えるとわかりやすいでしょう。
一般のパソコンユーザーが使うベクターデータは、たとえばWordやPowerPointなどの図形です。
ラスター/ベクター変換は作業が早く終わるだけでなく、変換後にデータを編集しやすいのもメリットです。
どこまで正確に変換できるかが鍵ですが、正確性の基準をクリアしていれば、ラスターデータよりもその後の使い回しをしやすくなります。
JWCADで通常のトレースをする方法
通常のトレースをJWCADで行う手順は「画像をJWCADで開く」「画像の線を直線や曲線の描画機能でなぞる」というだけです。
このとき、画像用と描画用でレイヤーを分けるのがポイントとなります。
レイヤーとは層のことで、積み重ねられた透明のフィルムのようなものです。
下のレイヤーに画像を貼り上のレイヤーでなぞることで、両者を別々に管理できます。
レイヤーは他のソフトではレイヤーと呼ばれることが多いのですが、JWCADではソフト内でレイヤーと表記されているため、レイヤーと呼ぶのが主流です。
レイヤー分けさえできれば、あとは通常の描画の要領で線をなぞるだけでトレースできます。
JWCADで「ラスター/ベクター変換」をする方法
ラスター/ベクター変換は、JWCADで行うことはできません。
変換自体は別のソフトで行います。変換後のデータは微調整が必要なことが多いため、その微調整の段階でJWCADを使うのが一般的です。
変換は無料配布されているフリーソフトでできます。
よく使われるソフトの1つは「ScanBmp Monkey II」で、BMP(ビットマップ)の画像をベクターのデータに変換するものです。
ベクターデータの形式は複数用意されていますが、その中のjwcを選べばJWCADでも開けるようになります。
ScanBmp Monkey IIの操作はシンプルで「ふぁいるをひらく」→「けいさん」→「でーたのほぞん」と、ボタンを順番に押していくだけです。
「けいさん」のボタンを押した後は、スケールと解像度を入力します。
スケールはトレースする元の図面に「1/500」などの数値で書かれているものです。
解像度はdpiという単位で表すもので、わからない場合はWeb上の無料ツールに画像をアップロードして測定できます。
ScanBmp Monkey IIでBMP画像を読み取るためには「モノクロ2値」にしておくことが必要です。
モノクロ2値とは「白と黒以外の色が一切ない状態」を指します。
モノクロ写真のように中間色があるものは「グレースケール」です。
BMP画像をモノクロ2値にする場合、ペイントで開いて「モノクロビットマップ」として保存します。
画像をこれからスキャンする場合、その段階からモノクロビットマップで保存することも可能です。
多くのメーカーのスキャナでは、スキャン時に表示されるメニュー画面で設定できます。
スキャナでなくコピー機のスキャナ機能を使う場合は、モノクロビットマップで保存できない機種もあるものです。
その場合は「TIFF」を選べばモノクロ2値で保存できることが多いため、TIFFを選びましょう。
パソコンに取り込んだ後で、そのTIFFをBMPに変換します。変換に使うソフトはペイントでも各種フリーソフトでもかまいません。
スキャンするときは解像度を設定できる機種が多いものです。300dpiや600dpiなどの主な解像度を選べることが多くなっています。
ここで自分が選んだ解像度を覚えておけば、ScanBmp Monkey IIの「けいさん」の段階で、解像度を調べずにそのまま入力可能です。
ScanBmp Monkey IIを使うときの注意点は、線が細切れになることが多いことです。
一見すると普通の直線でも、拡大してみると点線のようになっていることが多くあります。
このような部分は必要に応じて、先に解説した通常トレースの方法を使って手作業で線を描き直しましょう。
水道や電気の図面をトレースするなら専用CADソフトが便利!
トレースは便利な作図方法ですが、緻密さが要求される場面では使えないことがほとんどです。
特に水道や電気の図面は道路工事などと比較して、ミリ単位の小さな誤差も許されないことが多くなります。
このような図面ではラスター/ベクター変換ができないのはもちろん、通常のトレースも許されないことが多いものです。
そのため、トレースではなくゼロから作図を行う「CAD製図」を行うケースが多くなります。
正確な図面がかけるのはいいことですが、多くの案件をこのやり方でこなしていると、徐々に工程が詰まってしまうものです。
それを避けるには「CAD製図でもトレース並みに早くかけるソフト」が必要になります。
そのために役立つのが水道・電気のそれぞれのジャンルに特化したCADソフトです。
ゼロから製図する場合でもトレースをする場合でも、水道・電気に特化したCADソフトがあれば、図面作成の負担は大幅に軽減されます。
より短い時間で精度の高い図面を作成したいと考えている場合、水道・電気に特化したCADソフトの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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