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  • 2024年08月30日

管工事会社における事業継承の重要性とは?流れや成功事例を解説

水道工事に関する知識
管工事会社における事業継承の重要性とは?流れや成功事例を解説

管工事会社を含む建設業では、人手不足が深刻化しています。後継者が見つからない場合、廃業しかないと諦めてしまうかもしれませんが、親族や従業員への承継だけでなく、M&Aによる存続も含めたうえで適切な手法を考えることが重要です。

 

本記事では、管工事会社における事業承継の重要性からメリット、事業承継の種類とプロセスまで解説します。管工事会社の存続に向けて、最適な事業承継を実行するためにぜひお役立てください。

管工事会社における事業承継の重要性

NIKKEI COMPASSによると、管工事業界における2023年度の受注高は前年度比で11.9%増の1兆8,105億円です。2021年から連続で増加傾向にあり、コロナ禍の低迷から需要が戻っていることがわかります。
 

市場や業界における需要は高いものの、ベテラン職人の高齢化や人材不足により後継者がなかなか見つからない会社も少なくありません。また、多重下請け構造により、現場に携わる会社の利益が出にくい点も解決すべき問題です。
 

こうした状況を脱却するために効果的な手段として、事業承継に注目が集まっています。
 

事業承継と事業継承の違い

事業承継と事業継承は、よく似た言葉ですが異なる用途で使われます。「承継」は、地位や事業、仕事といった形のないものの引き継ぎを指し、「継承」では身分や義務、財産など形のあるものを引き継ぐ際に用いられます。
 

ただし、両者の違いが明確に示されているわけではなく、広義ではほぼ同じ意味で用いられます。中小企業庁でも「事業承継」という表記を選んでいることから、一般的には「事業承継」を使って問題ないでしょう。
 

 

事業承継の種類

事業承継には、以下3つの種類があります。
 
  • 親族内承継
  • 従業員承継(親族外承継)
  • M&A
 

ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく説明します。
 

親族内承継

親族内承継とは、経営者の親族に事業を引き継ぐ手法です。一般的にイメージされる事業承継のタイプであり、管工事業や建設業においても主流な方法として浸透しています。
 

創業者や2代目以降の経営者が親族に事業を引き継ぐことにより、社内の従業員や顧客との関係を良好に維持しやすい傾向があります。また、自分のことをよく知っている子どもや血縁の誰かに経営を委ねたいと思うのは当然のことであり、比較的安心して会社を任せられ、セカンドライフを楽しめるでしょう。
 

加えて、身内であれば贈与以外にも相続という形で会社の資産を引き継ぐことが可能です。相続にすれば、時間的な余裕が生まれるため、スムーズな納税につながります。
 

ただし、血縁であることと経営の素質があることはイコールではありません。また、親族であるというだけで周囲が特別扱いしてしまう可能性もあるため、客観的な評価をもって適正な後継者を選ぶことが重要です。
 

昨今は、価値観の変化や子どもの意思を尊重するなどの理由で、親の会社を子どもが引き継ぐケースは減少傾向にあります。家族や親族のなかから後継者を見つけられない場合は、親族外承継を考えることになります。
 

従業員承継

従業員承継は、企業の従業員や役員に事業を承継する方法で、親族外承継の1種と言えます。身内のなかに後継者にふさわしい人がいないなどの理由で、親族内承継が難しい場合に採用されています。
 

経営者の血縁ではない人物に事業を引き継ぐことで、取引先や顧客から反発が生まれるリスクはあります。ただ、従業員や役員は、経営ビジョンや事業内容をよく理解しており、経験やノウハウを持ち合わせているため、後継者育成の手間を省けます。
 

円滑な経営の存続が期待できますが、事業承継の資金を後継者が確保する必要があります。経営権の譲渡であれば取得費用が、贈与であれば贈与税が発生するため、後継者にとっては金銭的な負担がかかる可能性があります。
 

資金がなければ株式譲渡による事業承継はできないため、後継者を選定する段階から準備に取り掛かり、対策を考えておくことが大切です。
 

M&A

M&A(Mergers and Acquisitions)は、日本語で「合併と買収」という意味があり、他社との合併や他社への事業売却により行う事業承継手法です。前述の親族内承継と、従業員承継を含む親族外承継のいずれも困難なケースに有効な手段であり、近年は実施する企業が増加傾向にあります。
 

M&Aを利用して第三者に経営権を委託すれば、親族や従業員のなかに後継者としてふさわしい人がいなくても、事業を承継できます。また、単なる事業承継だけでなく、買収側の資金や事業拡大といった目的で実施されるケースも多く、売り手と買い手のシナジー効果によりさらなる事業発展も期待できます。
 

管工事業を含む建設業界においては、後継者不足に悩む中小企業が多く、業界全体としてM&Aを推進すべきであるという意見も見られます。経営者の引退年齢が来てから、事業承継が思うように進まず慌てることのないよう、M&Aによる事業承継も含めて検討するのが賢明でしょう。
 

管工事会社でも現実的な手段としてM&Aを視野に入れることで、廃業することなく事業を承継できる可能性は高まります。ただし、M&Aを成功させるためには、入念な準備や戦略が必要になるため、M&A仲介会社など実績が豊富な専門家へ相談することをおすすめします。
 

 

管工事会社が事業承継を行うメリット

管工事会社の事業承継により、さまざまな課題の解決につながる可能性があります。ここでは、管工事会社における事業継承で期待できる代表的なメリットを説明します。
 

廃業せずに会社や事業を存続できる

事業承継が成功すれば、廃業を回避して、会社や事業を維持することが可能です。親族内承継や親族外承継では、経営者が入れ替わるだけで会社や事業は引き継がれるため、取引先との関係を維持できます。
 

また、廃業した場合、従業員は転職を余儀なくされますが、事業承継により従業員の雇用を守ることが可能です。
 

個人保証や担保を解消できる

M&Aで会社を売却した場合、経営者の個人保証や担保を解消できます。会社経営には通常、経営者の個人保証や担保が求められますが、M&Aを行うと多くの場合、負債も買収企業へ引き継がれます。その結果、自社における負債を解消したうえで、売却益を得ることが可能です。

経営基盤を強化できる

大手企業とのM&Aが実現すれば、経営基盤の強化につながります。資金力のある親会社の傘下に入って経営を続けられれば、資金繰りが安定します。また、買収企業側のリソースを活用することで、シナジー効果により双方に大きな利益をもたらす可能性が高まります。
 

 

事業承継の基本ステップ

事業承継は、通常5年以上の長い期間を要するプロセスです。計画的に進めるためにも、ここで事業承継の基本的な流れを押さえておきましょう。
 

1. 専門家へ相談:事業承継の種類や進め方

まずは事業承継の実績が豊富な専門家に相談してみましょう。特に、初めての事業承継では、何から取り掛かるべきかわからず、迷ってしまうこともあるでしょう。早い段階で商工会議所などへ相談しておくことで、円滑な計画の立案につながります。
 

また、株式など資産の承継プロセスには、税務や財務も深く関係しており、専門的な知識を要します。また、顧問税理士や各士業といった専門家に話しをすれば、後継者の育成や引き継ぎ方法といったさまざまな問題の解消へと導ける可能性があります。
 

2. 後継者の選定:適切な後継者を見つける

事業承継において、後継者の選定は最も重要なステップの1つです。適正のある後継者を見つけることができれば、事業承継計画が前進します。通常は、親族または従業員のなかから適切な後継者を選び、育成に取り組むのが一般的です。
 

もし、身近で後継者を選べない場合は、M&Aを検討することになります。後継者の教育は経営者が独自に行いますが、後継者が事業内容や経営について正しく理解し、従業員と良好な関係性を構築するための対策を講じる必要があります。
 

3. 事業の現状分析:財務状況や業務内容の整理

事業の現状を把握、分析し、課題を可視化することで、事業承継後の進展につながるヒントを掴むことができます。会社の理念や経営戦略、商品開発力といった事業に関わる要素はもちろん、財務状況なども再確認しておきましょう。
 

4. 事業承継計画の策定:スケジュールと役割分担

ここまでの過程でまとめた情報を、親族や会社の役員など関係者と共有しながら、いつどのように承継を行うのか、具体的な事業承継の計画を策定します。5年以上を要する長期の事業承継計画をスムーズに進めるためには、綿密な計画立案が必要です。
 

項目によっては数値を添えるなど、できるだけ実用的な計画になるまで内容を詰めておきましょう。
 

5. 資産や株式の移転:法律に基づく財産分与と株式移転

事業承継の計画が定まったら、いよいよ計画の実行に移ります。計画に基づき、経営権や経営資源、株式、許認可などの資産の評価と移転を行います。
 

株式は、後継者が経営権を取得するために必須の要素ですが、相続や譲渡、贈与といった選択肢があります。後継者への負担を軽減するために節税対策も考慮して、最適な手法を選びましょう。
 

 

管工事会社における事業承継の事例

管工事会社における事業承継の事例を紹介します。日本国内だけでなく、海外企業との事例も紹介しますので、参考にしてください。
 

協和日成が静岡ガスリビングへ事業承継

ガス機器の管工事を中心に扱う株式会社協和日成は、2018年9月にグループ会社のエネリア静岡東のガス機器販売事業を、会社分割によって静岡ガスリビング株式会社へ事業承継しました。
 

静岡ガスリビング株式会社の親会社である静岡ガス株式会社は、「地域で選ばれ続ける存在となる」ことを企業理念に掲げています。工事会社としての機能を強化・推進することが、ビジョンの実現と安定収益の確保につながるとし、事業譲渡に至りました。
 

エア・ウォーターがシンガポールの2企業へ事業承継

医療用設備の管工事などを行うエア・ウォーター株式会社は、2017年6月に病院の内装工事や管工事などを担うシンガポールの2企業(GLOBALWIDE INTERNATIONAL PTE. LTD、GLOBALWIDE M&E PTE. LTD)の株式を譲り受けました。
 

エア・ウォーター株式会社では、日本で培ってきた病院設備工事や医療サービスとのシナジー効果による事業拡大を目的とし、2企業を東南アジアの医療事業拠点にすることを発表しています。
 

日宝工業が新日本空調へ事業承継

空調設備の管工事をメインに扱う新日本空調株式会社は、2016年7月に電気設備や空調設備工事を担う日宝工業を、株式譲渡によって子会社化しました。工場の電気設備や産業施設設備の工事に強みを持つ日宝工業株式会社の株式を取得したことで、新日本空調株式会社における新しいサービスの提供や技術力の融合による効果が見込めます。
 

 

管工事会社の経営を支えるためには人材育成と業務効率化が重要!

管工事業界でも後継者不足が進み、事業存続の危機に直面している管工事会社は少なくありません。不動産やインフラ設備に直結する管工事業は将来的なニーズも高いため、適切な事業承継により廃業を避けて従業員を守れる可能性が高まります。
 

事業承継は長期的な計画や専門知識が必要なため、検討段階から専門家に相談することをおすすめします。また、現時点での会社経営を安定させるためには、人材育成や業務効率化に取り組むことも重要です。
「plusCAD機械αは、管工事で必要となる図面や各種書類を一元管理できる専用CADソフトウェアです。マウス操作のみで作図が可能で、充実のサポート体制により事務作業の効率化を促します。経営の安定化と事業発展に向けて、この機会に導入を検討してはいかがでしょうか。
 

 

工事会社の事業承継についてよくある質問


 

管工事会社の事業承継(M&A)で譲渡企業が得られるメリットは?


管工事会社において、M&Aで事業承継を行うことで、売り手となる企業側が得られるメリットには以下があります。

 

  • 後継者不足を解決できる

  • 廃業せずに済み、従業員の雇用を維持できる

  • 売却利益を得られる

  • 安定的な経営を維持できる


 

M&Aにより獲得した売却益は、経営者の引退後の生活費用にあてる以外にも、事業拡大や新規事業の立ち上げなどに利用することも可能です。

 

管工事会社の事業承継(M&A)で譲り受け企業が得られるメリットは?


管工事会社でM&Aにより事業承継を行う場合、買い手となる企業側が得られるメリットとして以下が考えられます。

 

  • 事業の拡大を加速化する

  • 工事の受注機会の拡大につながる

  • 優秀な人材を確保し、採用力の強化を図れる

  • 新しい領域への事業進出や事業の多角化が可能になる


 

ただし、譲り受け企業は譲渡企業の労務問題や債務といったマイナスの資産を引き継ぐ可能性もあります。契約を締結する前に、よくリサーチすることが重要です。

 

管工事会社の事業承継で使える税金対策の方法は?


管工事会社における事業承継で、使える可能性のある節税対策としては、「事業承継税制」と「暦年贈与」の2つが挙げられます。

 

事業承継税制は、非上場企業の株式を後継者に譲渡する際に税金が猶予される制度です。中小企業の事業承継を支援するために設立されました。事業承継により課される納税額を準備できていないときにも、事業承継を行うことを可能とします。

 

条件を満たせば税金が免除されることもありますが、利用する際に都道府県知事の認定などの手続きをクリアする必要があります。

 

暦年贈与制度は、年間110万円までの贈与では課税されない制度です。事業承継の時間的な余裕がある場合、何年かにわたって財産を分割して後継者に引き渡せば、納税額を抑えられます。

 

ただ、毎年同額を贈与し続けると、連年贈与として贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。節税に関しても、税理士に相談しておくと安心です。

 

管工事会社の事業承継については誰に相談すべき?


管工事会社における事業承継を検討する際には、事業承継の種類や後継者の選定、節税対策を含めた計画立案など考えなければならない項目が多数あります。税務や法律などの専門的な知識も必要となるため、専門家に相談することをおすすめします。

 

代表的な相談先としては、以下があります。

 

  • 銀行や信用金庫など金融機関

  • 商工会議所や事業引継ぎセンターなど公的機関

  • 税理士や会計士、弁護士といった各士業

  • M&A仲介会社やM&Aマッチングサイト


 

管工事会社の事業承継で必要な書類は?


管工事会社の事業承継で必要な書類は、事業承継の種類などによって変わります。親族内承継の場合、株式譲渡契約書や生前贈与契約書、遺産分割協議書などを求められる可能性があります。

 

また、従業員承継など親族外承継では、株式譲渡承認請求書や株主名簿などが必要です。M&Aの場合は、秘密保持契約書や意向表明書、基本合意書、最終契約書などを作成します。

 

 

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