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  • 2024年08月30日

【電気工事会社の事業承継ガイド】成功するためのポイントと注意点

電気工事に関する知識
【電気工事会社の事業承継ガイド】成功するためのポイントと注意点

電気工事会社でも昨今は後継者問題が拡大傾向にあります。事業承継というと親族内への承継が主流でしたが、他の選択肢を含めて検討することで、最適な形で企業や事業を残せる可能性が高まります。

 

本記事では、電気工事会社の事業承継について、種類や基本的なプロセス、事業承継のポイントなどを詳しく解説します。実際に事業承継を実施した電気工事会社の事例も後半で紹介しますので、会社の後継や事業継続について検討する際にぜひご活用ください。

事業承継とは?

事業承継とは、経営者が事業を後継者へと引き継ぐことです。事業承継により、経営権や長年培ってきた技術・ノウハウ、従業員といった資産を次世代へと引き渡し、事業を存続できます。
 

小規模事業者の場合、創業者や先代が成長発展させてきた経緯があり、特に経営者にとっては強い思い入れがあるでしょう。事業承継が成功すれば、事業に大きなダメージを与えることなく会社を存続することが可能です。
 

事業承継では、主に「経営権・経営資源・物的資産」の3つを引き継ぎます。それぞれの項目が意味する具体的なものは、以下の通りです。
 
  • 経営権の承継:社長の役割と経営権、後継者の選定・育成など
  • 経営資源の承継:経営理念や会社の信用力、ブランド、独自技術やノウハウ、人材・人脈など
  • 物的資産の承継:自社株式や自社で所有する土地・建物、設備、運転資金、個人資産など
 

事業承継と事業継承の違い

事業承継と「事業継承」は1文字違いで非常に似ていますが、「承継」と「継承」は異なる使い方をします。「承継」では、地位や事業、仕事、精神といった抽象的で形のないものを引き継ぎ、「継承」では身分や義務、財産など形のあるものを引き継ぐイメージです。
 

つまり、引き継ぐものによって「承継」と「継承」を使い分けるのが一般的です。ただ、両者の違いは明確に定義されているわけではなく、前述した事業承継の内容に対して「事業継承」という表記が使われるケースもあります。
 

 

電気工事業界における事業承継の現状

電気工事会社は、建設業との関係が深いこともあり、建設業界の影響を受けやすい傾向にあります。そのため、建設業界においても進んでいる少子高齢化や若手不足により、後継者不足に悩む企業が少なくありません。
 

特に中小企業の数が多い電気工事業界では、次の経営者候補が見つからず、事業承継が思うように進まないケースが見られます。事業承継が実行できず、廃業を余儀なくされた場合、従業員の行き場所が失われるなどの問題も発生するでしょう。
 

また、技術の継承も課題に挙がっています。職人や企業が独自に所有するノウハウや技術は、高齢の熟練者が退職し、若手が増えなければ引き継がれない可能性が高まります。事業承継では、事業価値の適正評価が重要ですが、人材不足がさらに深刻化し、企業の資産となる人材や技術が減少してしまえば、事業承継がより困難となることも考えられます。
 

問題解消に向けて労働環境を改善し、若年世代の入職を促進することに加え、事業用AIやロボットの導入による業務効率化といった対策の必要性が高まっています。
 

 

事業承継の種類

事業承継には「親族内承継」「従業員承継(親族外承継)」「M&A」という3つの手法があります。事業承継では親族内承継が圧倒的に多く、親族のなかで継ぐ人がいない場合、M&Aなど他の選択肢を検討する前に廃業を決めてしまうケースも少なくありません。
 

ただ、事業承継の方法を見直すことで、事業存続の可能性が高まる場合もあるため、他の方法についても理解しておきましょう。ここでは、3つの手法の特徴について解説します。
 

親族内承継

親族内承継とは、経営者の子どもや親族の誰かに事業を引き継ぐ方法です。一般的な事業承継のイメージであり、最もポピュラーな方法でもあります。
 

親族内承継では、経営者は自分がよく知っている身内に事業をバトンタッチできるため、従業員や取引先の反発が生まれにくく、円滑な経営存続が期待できます。経営者自身としても、自分の親族であれば安心して会社を託せるでしょう。
 

また、親族への事業の引き継ぎは、贈与以外にも相続という形を取ることで、株式などの会社の資産を受け渡せる場合があります。ただし、親族であれば経営者としての素質があるとは限りません。血縁というだけで特別扱いせず、フェアな評価で後継者を見極めることが大切です。
 

昨今は、少子化に加え、子どもに無理やり事業を押し付けることを好まない経営者も増えています。子ども自身の人生選択を踏まえたうえで、親族で後継者がいない場合は他の事業承継方法も検討する必要があるでしょう。
 

従業員承継

従業員承継とは、企業の従業員や役員などに事業を引き継ぐ手法です。親族内承継の対義語にあたる親族外承継の1つと言えます。従来は、親族のなかに経営者として適正な人物がいないなど、親族内承継が難しい場合に採用されていました。
 

社内の人物なら経営ビジョンや事業内容に理解があり、経験やノウハウを持ち合わせているため、スムーズな事業存続が期待できます。また、経営者としての育成負担が減るというメリットも見込めます。
 

ただし、経営者の身内以外を後継者にするため、従業員や取引先から反発を受けるリスクは親族内承継よりも高まるでしょう。また、経営権や株式を譲渡または贈与する際に費用がかかり、贈与の場合は贈与税が課せられるため、引き継ぐ側の負担が増える可能性もあります。一定の資金を準備して節税の対策を考えることが大切です。
 

M&A

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、直訳すると「合併と買収」という意味で、他の会社との合併もしくは買収により事業を承継する手法です。親族内承継と親族外承継のいずれも困難な場合に可能性のある方法で、現代的な事業承継と言えるでしょう。
 

最近では、人手不足により後継者が見つからず、従来のような事業承継が難しいケースが増えており、有効的な手段としてM&Aを選ぶパターンが増えています。
 

親族や従業員のなかに次期経営者に適した人がいなくても、M&Aによって第三者に経営権を委託して事業を承継できる可能性が高まります。また、他の会社や事業とのシナジー効果により、事業スケールの拡大も期待できるでしょう。会社の売却益は、経営者の引退後の費用以外にも、新しいビジネスの立ち上げに使う方法も考えられます。
 

加えて、友好的なM&Aであれば、従業員の労働環境など良い効果も期待できるでしょう。ただし、M&Aでの事業承継を検討する際には、M&A仲介会社など実績が豊富な専門家に相談することをおすすめします。
 

 

事業承継の流れ・基本プロセス

ここからは、事業承継の基本的なプロセスを見ていきましょう。
 

親族内承継・従業員承継の基本的な流れ

親族内承継、あるいは従業員承継の流れは以下の通りです。
 

■1. 事業承継計画の立案を行う

まずは事業承継計画を策定します。一般的には、事業承継は5年以上と長期間にわたって進められます。事前に綿密な計画を立案することで、円滑に進めることが可能です。事業承継計画では、株式をはじめとする資産について具体的な数字も添えておくと、スムーズな進行が期待できます。
 

また、従業員承継など親族外承継の場合は、あらかじめ親族の了承を取っておく必要があります。従業員や取引先などの反発を回避し、安定した経営を維持するためにも事前周知は重要です。
 

加えて、親族外への事業承継では、将来親族が相続できるはずの株式などの遺留分を失う可能性もあります。親族の了承を得たうえで事業承継計画を考えることが大切です。
 

■2. 専門家へ相談する
事業承継計画には税務などの専門的な知識も必要です。自社だけでの策定が難しい場合には、迷わず専門家に相談しましょう。事業承継の実績や経験が豊富な専門家なら、後継者の育成や向き合い方といった悩みに関してもアドバイスを仰げる場合があります。
 

■3. 後継者を選定・育成する
事業承継計画の立案が終わったら、計画に沿って準備を進めます。後継者の選定と育成は、一般的には経営者が独自に行います。後継者が会社組織や各部署の業務をよく理解し、円滑な経営に取り組めるように育成する必要があります。
 

また、従業員との関係性の構築も重要です。必要に応じて、外部の経営者セミナーを利用すると良いでしょう。
 

■4. 資産・株式・許認可など資産の評価と移転を行う
事業承継において、最も重要な手順の1つが会社の資産や株式、許認可などの評価と引き継ぎです。会社を存続させるにあたって、後継者が経営権を獲得するためには株式の承継は必須です。
 

相続や贈与、譲渡といった手法があり、複数の手法を組み合わせるケースもあります。節税対策も考慮して、最適な方法を決めましょう。
 

■5. 個人の保証・負債の処理を行う
経営者の個人保証や負債の処理もあわせて行っておくとスムーズです。事業承継が完了すれば、財産の一部として後継者に引き継がれます。できるだけ今の経営者の代で処理しておく方が、後継者や今後の会社の負担が軽減されるため、専門家と相談してみましょう。
 

M&Aの基本プロセス

M&Aによる事業承継のおおまかな流れは、以下の通りです。
 

■1. M&A仲介会社などへ相談する
M&Aによる事業承継は、多くの場合M&A仲介会社など専門家へ相談します。一般的なM&Aの成功率は約3~5割と言われており、売却したくても買い手を見つけることが困難なケースが少なくありません。
 

また、M&Aのプロセスでは専門的な知識が求められるため、経営者や自社だけで進めることが難しい場合もあるでしょう。仲介会社などのサポートにより、M&Aの成功確率が上がり、手続きの期間も短縮できる可能性が高まります。
 

■2. 秘密保持契約書を締結する
M&Aを行う際には、重要情報の扱いなどを取り決めた秘密保持契約書を作成します。M&Aにおいて機密情報の管理は最も重要です。外部にM&Aの情報が漏れてしまうと、取引先や従業員に不安を与えてしまう場合があります。
 

また、ライバルがいた場合、より有利な条件でM&Aを提示してくる可能性も高まります。M&Aの最終契約書が締結されるまでの間は、情報の流出には十分留意しましょう。
 

■3. 承継先の選定と条件交渉を行う
M&A仲介会社などと相談しながら、承継先を選びます。専門家に相談すると、幅広いネットワークを駆使して承継先を見つけてもらえる可能性があります。
 

また、企業価値評価やM&Aスキームの選択について、仲介会社などに相談しながら進めます。そして、交渉が始まると、売り手と買い手双方の経営者が今後についての話し合いを実施します。
 

■4. 基本合意書を締結する
M&Aの売り手と買い手両者が合意したら、基本合意書を作成します。基本合意書は、M&Aの方向性を定めるもので、おおまかな譲渡価格や基本条件、M&Aスキームなどが記載されます。
 

ただ、基本合意書はM&Aの結果に影響しないものです。その後の交渉次第で、内容の変更やM&Aの破断も考えられます。
 

■5. 意向表明書を作成する
続いて、M&Aの条件や方針を記載した意向表明書を買い手が作成し、売り手に提示します。意向表明書には、暫定的な譲渡価格や今後のスケジュールなどが記載されます。
 

なお、意向表明書には法的拘束力はなく、作成は必須ではありませんが、交渉をスムーズに進めるために役立ちます。
 

■6. デューデリジェンスを実施する
デューデリジェンスとは、買い手による売り手企業の精査作業です。M&Aにおいては重要なプロセスであり、税務や法務などの専門家がデューデリジェンスを実施します。
 

結果次第では、譲渡価格が変わる、契約が頓挫するなど、その後のプロセスに影響が及びます。
 

■7. 最終契約書を締結する
デューデリジェンスの結果を基に、交渉を行って双方が同意すると、最終契約書の締結が行われます。最終契約書は、M&Aの最終的な条件や譲渡価格、損害賠償などについて記載されます。
 

M&Aのスキームによっては、最終契約書の名称は変わりますが、重要な契約書類であることには変わりなく、弁護士など専門家のチェックを依頼しましょう。
 

■8. クロージングを行う
最終契約書の締結後は、経営統合を行うクロージングに移行します。主に経営統合後の経営陣の選任や株式の意向などについて、専門家に相談しながら手続きを行います。
 

 

電気工事会社における事業承継のポイント

電気工事会社における事業承継を円滑に進めるためのポイントを押さえておきましょう。
 

技術とノウハウの伝承

事象承継の後も、自社で長年培ってきた技術やノウハウを適切に伝承できるように体制を整えることが重要です。技術やノウハウの伝承は、新人研修や日々の業務を通じて自然と進むとは限りません。
 

業務における手段や方法は、客観的な情報として図面や文章などに残しやすいですが、職人の勘のようなものは簡単に継承しにくく、時間を要します。可視化の難しいノウハウのような情報を蓄積、共有するための仕組みや体制を構築すると、事業承継に役立ちます。
 

顧客との信頼関係の維持

事業承継について取引先や従業員へしっかりと説明を行いましょう。特に小規模の電気工事会社では、経営者の人柄や価値観が社内に浸透しています。十分な説明がないまま後継者に引き継がれた場合、周囲から理解を得られないかもしれません。
 

取引の中止や従業員の大量離職を避けるためにも、後継者が確定した後で徐々に周囲に説明することが大切です。
 

資格や許認可の引き継ぎ

電気工事会社が電気工事業を営むうえで、主に電気工事業者登録と建設業許可という2つの許認可が必要です。いずれの許認可も、第1種・第2種電気工事士や1級・2級電気施工管理技士といった有資格者の在籍があって、申請が可能になります。
 

事業承継後も会社の事業を存続するためには、有資格者の在籍や許認可に関して必要な手続きを確認しておきましょう。
 

 

電気工事会社における事業承継の事例

ここからは、実際に電気工事会社における事業承継の事例を紹介します。
 

メビウス(電気工事業)のオーウイルへの譲渡

店舗電気設備などを扱うオーウィル株式会社は、100%子会社となる株式会社アクセルテックを新設し、吸収分割で株式会社メビウスの電気工事業を譲受しました。電気機器設置作業の内製化により、大型シーリングファンの提案・販売事業の拡大を目指した契約の締結です。
 

蒲原設備工業による北陸電気工事へのM&A

新潟県燕市に拠点を構え、官公庁の管工事や空調工事などを担う株式会社蒲原設備工業は、発行済みの全株式を北陸電力グループ傘下の北陸電気工事株式会社へ売却しました。主な買収理由は、新潟エリアへの事業進出と商圏の拡大、そして中期経営計画の達成です。
 

オーテックによるフルノ電気工業の買収

空調制御システムなどを手掛ける株式会社オーテックは、株式譲渡によりフルノ電気工業株式会社を買収しました。官公庁を中心に電気工事を担うフルノ電気工業株式会社を子会社化し、道北エリアの受注を獲得すること、また、工事資格を持つ人材を有効活用することを狙いとしています。
 

日東工業による日東テクノサービスの買収

電気や情報のインフラ事業を手掛ける日東工業株式会社は、グループの経営資源の集中と効率化を目的とし、100%子会社で電気工事業務などを行う日東テクノサービス株式会社との吸収合併を実施しました。
 

太平工業と日鉄エレックスのM&A

鍛造や素材加工などを手掛ける太平工業株式会社は、株式会社日鉄エレックスとの合併を実施しました。太平工業を存続会社とする吸収合併により、両者の強みを活かしたエンジニアリング提案力の強化や経営基盤の強化などを狙っています。
 

 

電気工事業を存続させるためには人材育成と業務効率化が重要!

事業承継では、親族内承継以外にも従業員承継やM&Aなどの手法により、会社を存続できる可能性があります。電気工事業界でも深刻化している人手不足や後継者問題の解消を目指すうえでも、事業承継は効果的なオプションの1つと言えます。
 

経営者の最後の大仕事ともいわれる事業承継を成功させるためには、綿密な計画立案が必要です。また、需要の高い電気工事業界で、安定した会社経営を実現するためには、人材育成や業務効率化に取り組むことも重要です。
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電気工事会社の事業承継についてよくある質問


 

電気工事会社の事業承継をあきらめて廃業するデメリットは?


電気工事会社の後継者が見つからず、廃業することになった場合、以下のようなデメリットが考えられます。

 

  • 取引先が新しい電気工事業者を探さなければならない

  • 従業員の雇用先がなくなり、転職が必要になる

  • 設備の廃棄や事務所の原状回復などの費用が発生する

  • 現在の経営者が精神的ダメージを負う可能性がある


 

廃業によってさまざまな負担が増える可能性があるため、事業承継を成功させる方法をよく考えることが大切です。

 

電気工事会社の事業承継で行いやすい節税方法は?


電気工事会社の事業承継で検討すべき節税方法は、主に以下2つです。

 

  • 事業承継税制:非上場株式を後継者に譲渡する税金(贈与税・相続税)の猶予措置

  • 暦年贈与制度:年間110万円までの贈与は非課税になる


 

電気工事会社の事業承継方法で、M&Aを考えるべき主なケースは?


電気工事会社の事業承継で、M&Aを検討すべきケースとしては、下記があります。

 

  • 電気工事業の許認可に必要な有資格者の確保が難しい

  • 後継者が不在で親族内承継や親族外承継の可能性が低い

  • 現在の会社を離れて別の事業を新たに始めたい


 

別事業を始めたい時に、M&Aが実現すれば会社を存続させつつ新事業に取り組む余裕が生まれやすいでしょう。

 

電気工事会社の事業承継において必要な届出は?


事業承継の手法などによって必要な書類は異なりますが、基本的には電気工事会社の経営者と後継者が届出を行います。代理人でも可能な手続きについては、司法書士などに依頼することが可能です。

 

例えば、相続で株式の承継を行う場合、相続税申告書や相続登記申請書などが必要です。また、M&Aの場合は基本合意書や意向表明書などを作成します。

 

電気工事会社の事業承継の相談先は?


電気工事会社の事業承継について、相談できる場所は主に以下があります。

 

  • 銀行や信用金庫などの金融機関

  • 商工会議所などの公的機関

  • 税理士や弁護士などの専門家

  • M&A専門マッチングサイト

  • M&A仲介会社


 

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