- 2024年11月12日
給排水工事申請とは?申請が必要な工事内容や申請の流れ・必要書類を解説
水道工事に関する知識
水道工事は、私たちの生活に欠かせない水を供給するためのインフラ工事です。原則として、全国のすべての水道は各自治体が管理しており、水道設備の新設や撤去工事を行うためには、市町村の水道局に給排水工事申請を出す必要があります。
本記事では、給排水工事申請の概要や申請が必要とされる工事の種類、必要書類などについて解説します。給排水工事を行ううえで知っておきたい申請手続きの流れや提出物も説明しますので、ぜひ参考にしてください。
コンテンツ
給排水工事申請の概要
給排水工事申請とは、水道管の新設や撤去といった水道工事を行う際に、管轄している自治体などに工事の許可を取るための手続きです。工事を予定している場所の管轄水道局に、図面や書類などを提出し、申請が認可された後で給排水工事を実施できることになっています。給排水工事申請の提出書類は多岐に渡り、図面の仕様など細かな規定が各自治体ごとに異なっており、工事エリアが変われば申請方法を調べ直さなくてはなりません。書類を揃えるだけでも時間を要するので、計画的に事前準備を進める必要があります。
住民の日常生活の重要なインフラである水道工事は、各自治体の指定工事業者のみが行えることが決まっています。そのため、工事を受注できる業者数自体が限られており、現場での業務以外に割く時間がないほど忙しいこともあるでしょう。そんなときには、給排水工事申請の代行サービス業者に依頼するという選択もあります。
給排水申請が必要な工事の内容
申請が必要とされる給排水工事は、以下4つの種類に分けられます。- 新設工事
- 改造工事
- 撤去工事
- 修繕工事
新設工事
「新設工事」とは、給水装置を新しく設置する工事のことです。住宅を新築したときや、土地に新しく水道を引く際に、水道メーターや止水栓、蛇口といった給水用具を新たに設ける工事を指します。自治体指定の給水装置工事事業者の中から、依頼する業者を選び、契約します。住宅新築工事などの施主が指定事業者に正式に依頼した後は、指定事業者が自治体など各所に連絡を取り、手続きを進めます。
自治体から提示された手数料や給水加入金を納付するのは、施主の役割です。道路工事の許可について、市道や県道の場合には許可が出るまで数週間から1ヶ月前後かかる場合があります。敷地内の工事に影響がなければ、道路占用許可を取っている間に工事をしてしまうケースも見られます。
改造工事
「改造工事」とは、すでに配管されている給水装置に対して、給水管や水栓など給水用具の変更を行う工事のことです。給水管の延長や配管サイズ、材料の変更、給水用具の個数や位置の変更など、原形が変わるような工事が該当します。住宅のリフォームで、2階に洗面台を追加するといったケースが中心です。改造工事の見積依頼から申請、着工までのおおまかな流れは、新設工事とほぼ変わりありません。ただ、給水管の口径を変更する際など、従来の給水加入金との差額が出る場合は、別途納付する必要があります。また、道路工事がない場合には、道路占用許可の取得などは不要なため、新設工事よりも短期間で申請が完了するでしょう。
なお、水道料金を工事用に切り替えるケースでは、水道中止届出書などの書類を求められる場合があります。
撤去工事
「撤去工事」は、配水管の分岐からすべての給水装置を取り除く工事のことです。撤去工事では、新設工事や改造工事で必須とされている設計図面や設計関連の書類は提出不要です。ただ、道路工事のための道路占用許可などの申請が求められます。なお、公道部分の水道管を残して、敷地内の給水装置を完全に撤去する工事は、撤去工事ではなく改造工事に該当します。
撤去工事の基本的な流れは、新設工事とほとんど同じですが、新しく設置する装置や設備がないため、書類審査の時間は比較的短めです。撤去工事でも、指定事業者を選定した後は、手数料の納付以外は事業者が申請手続きを担います。
修繕工事
「修繕工事」は、給水装置の部分的な修理工事を行うことです。給水管の交換や水漏れ修理など、給水管の原形は変更せずに、破損箇所のみを修繕する工事が該当します。パッキン交換などの軽微な修繕工事以外は、原則として給排水工事申請が必要です。修繕工事の申請に必要な書類は、水道メーターから道路側を工事するのか、建物側を工事するかで異なります。上流となる道路側は、自治体が工事を行うため基本的に申請は不要です。
一方、下流とされる建物側の工事は申請が必要ですが、道路工事の申請は不要です。ただし、使用者側の何らかの原因によって、道路の給水管にも作業が必要と判断された場合など、状況によっては道路工事の届け出も必要です。
なお、給水装置の原形を変えない範囲の小規模な修繕工事で、緊急性が高い場合には、事後申請や申請が不要となり、修繕工事完了報告書の提出のみで完了するケースもあります。
上流における水漏れや給水管の老朽化といった問題が見られる場合は、水道局のお客様受付センターに連絡しましょう。水道局で工事を進めてくれる場合は、申請は不要です。
給排水申請の流れ
給排水工事の見積依頼から申請、着工までのおおまかな流れは下記の通りです。- 指定事業者の選定と請負契約の締結
- 指定事業者による承諾書や申請書類、設計図面の作成
- 指定事業者が自治体窓口に申請
- 自治体による設計審査
- 手数料や給水加入金の納付
- 自治体による工事承認と道路占用許可申請手続き
- 道路管理者や所轄警察署による審査
- 道路使用許可についての所轄警察署の審査
- 指定事業者の材料検査や分岐工事立ち会い予約
- 水道工事着工
先述した工事の種類によっては、上記のうち省かれる手順もあります。また、修繕工事などで道路内での作業がない場合は、道路に関する手続きや審査は不要です。
給排水申請に必要な書類
給排水工事申請で必要な書類は、厳密には申請先の自治体や工事の種類によって異なりますが、ほとんどの工事で共通する必要書類としては以下があります。- 給水装置/排水設備等工事申込書(新設・改造・撤去・修繕)
- 給水装置/排水設備等工事施工申請書(新設・改造・撤去・修繕)
- 給水装置/排水設備等工事設計審査申請書
- 水道使用届
- 工事用材料検査申請書
- 位置図
- 工事図面(平面図・配管図・断面図)
- 建築確認済証
- 利害関係者の承諾書
- 道路工事施行承認書
- 道路占用許可申請書
- 道路使用許可申請書(付近の見取図含む)
工事申込書や工事施工申請書、工事設計審査申請書は、工事の種類ごとに作成します。位置図とは、周辺エリアの地図に工場場所を記入した図面です。地域によっては、水道メーターなどを書き込むこともあります。
利害関係者の承諾書は、土地使用承諾書や分岐承諾書、家屋所有者承諾書などが含まれます。自治体やエリアによっては、同意書や確認書類といった呼び方をする場合や、工事申込書に統合されているケースもあります。
道路占用許可申請書と道路使用許可申請書は、工事に際して道路を一部でも塞がなければならない場合に提出が必要です。道路占用許可申請書は、国道であれば国土交通省、県道であれば県の道路管理事務所に提出します。道路使用許可申請書は、道路の交通安全管理を行っている所轄警察署が提出先です。
なお、申請する自治体や工事内容などによって、書類の名称が変わる場合があります。正確に把握するために、該当する自治体の水道課などに直接問い合わせましょう。
まとめ
水道工事は、住民の生活に不可欠なインフラに関わる重要な工事のため、指定事業者が給排水工事の申請を行い、許可を得た場合のみ施工できることが定められています。パッキンの交換など軽微なものや緊急性の高いトラブルを除き、原則としてすべての工事は申請が必要です。提出書類の種類が多く、許可を得るための業務も多いため、計画的に進める必要があります。給排水工事申請の概要を押さえて、スムーズな工事を実施しましょう。
給排水申請についてよくある質問
給排水工事申請を依頼する業者は施主側で選べますか?
水道工事は、各自治体の指定事業者のみが行えることが決まっています。指定事業者の中からどの業者に依頼するかは、施主が選定可能です。給水装置工事主任技術者資格を取得し、工事に必要な機器を完備している業者であれば、ほとんどの場合水道局の指定事業者として認定されます。そのため、実績や施工技術は別に確認する必要があります。
また、工事費用は施主と業者間で決めるのが一般的で、自治体は特に定めていないため、高額な見積もりを提示されることも考えられます。確かな技術を持つ施工者に、適正価格で水道工事を依頼するためには、施主側は相見積もりを取るなどの対策が必要です。
給排水工事申請の許可がおりるまでどのくらいの時間がかかりますか?
給排水工事申請を行い、許可が降りるまでにかかる時間は、工事場所や工事範囲などの条件によって変わります。新設工事の場合、自治体での設計審査にある程度の時間を要します。また、道路工事が必要なケースでは、国道や県道の占用許可を取るために数週間から1ヶ月ほどかかる場合もあります。住宅の新築工事において、建物が完成しても水道工事が間に合わない、という事態になりかねないため注意が必要です。
給排水工事の申請代行サービスとは?
給排水工事の申請代行サービスとは、給排水工事に必要な申請業務を代行してくれるサービスのことです。指定事業者に代わって、給排水工事の申請書などの書類を作成し、必要な手続きを行ってくれます。申請作業のほとんどを任せることができ、自社で行う事務作業負担を大幅に削減できます。また、工事申請に精通した専門家に依頼できるため、申請を効率的に通すことが可能です。ただ、代行を依頼する費用が別途かかる点や、施主と代行業者との仲介役として伝達を的確に行う必要がある点には注意が必要です。
給排水工事申請における注意点は?
代行サービスを使わずに、自社で給排水工事の申請を行う場合は、自治体の申請仕様を入念に調べることが大切です。提出書類や図面が不十分であった場合には、やり直しとなり、申請が通るまでに長い時間がかかってしまいます。工期の遅れを避けるためにも、あらかじめ自治体に確認するなどの対策を取りましょう。自社で給排水工事申請を行うことで、必要な書類や図面の作成を自社で進めることで、工事申請のノウハウが蓄積していきます。また、工事に関する細かい情報を社内で共有できるため、施主の意向を漏れなく反映した工事を実現できるでしょう。