- 2024年06月28日
図面の拾い出しのコツとは?注意点や積算ソフトを使うメリットを解説
水道工事に関する知識電気工事に関する知識
図面の拾い出しは、水道工事や電気工事において重要な作業の1つです。拾い出しが正しく行われないと、余計な費用や作業が発生し、工程やコスト管理にも影響が及ぶ可能性があります。拾い出し作業は手間がかかる作業ですが、積算ソフトなどを活用して効率化と担当者の負担軽減に努めることが大切です。
本記事では、図面の拾い出しの目的や作業時のコツ、注意点、積算ソフトを使用するメリットなどについて解説します。拾い出しを効率化し、工事現場業務に役立てるためにぜひご覧ください。
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図面の拾い出しとは?
図面の拾い出しとは、工事費の積算・見積りを行うために、図面から工事に必要な部材などの数量を拾う作業のことです。材料の数量かた、建設機械の使用料、職人や作業員の労務量、工事日数まで、現場に必要なあらゆる項目の数量を計測します。図面から寸法や仕様を正確に読み取る必要があり、正確さと専門性が求められる業務です。図面の拾い出しを行う目的
拾い出しにより、工事に必要な要素について把握し、工事をスムーズに進めることです。水道工事や電気工事など建設現場では、細かな工事が並行して行われます。各作業において、必要な資材や人材、重機などの正確な情報を的確に把握するために拾い出しが必要です。拾い出しがあいまいな場合や、ミスがあって正しく情報が拾われていなかった場合、現場の進捗やコストに影響が出る可能性があります。
必要に応じて、設計図だけでなく、平面図や立面図、仕様書など複数の資料を用いて拾い出しを行います。そして、各積算基準書などを用いて全体の費用を集計しておけば、スケジュールや予算が適切に考えられます。
図面の拾い出しの進め方
図面の拾い出しの手順としては、内訳書に記載する工種別に数量を算出します。工事の規模や種類などにもよりますが、通常の拾い出しは膨大な作業量のため、分担して進めます。例として、以下のように担当を分けます。- 建築工事構造担当(仮設工事~鉄骨工事までの構造躯体に関わる部分)
- 建築工事意匠担当(構造躯体以外の防水工事以降の工種)
- 電気設備担当
- 機械設備担当
通常は、国土交通省で定められている所要数量と設計数量を用います。それぞれの定義は以下の通りです。
設計数量とは、設計図書に記載されている個数及び設計寸法から求めた長さ、面積、体積等の数量をいう。所要数量とは、定尺寸法による切り無駄や、施行上やむを得ない損耗を含んだ数量をいう。
引用:国土交通省「公共建築数量積算基準」
設計図など図面に記載された数量は設計数量、許容範囲としてやむを得ないロスを加味したものが所要数量と呼びます。拾い出しを通して最終的には必要な工事費用を算出するため、所要数量を正しく把握しておく必要があります。
工事費は、基本的に以下の計算式で求められます。
工事費 = 数量 × 単価
上記の「数量」を計測する作業が拾い出しであり、前述の所要数量を用います。所要数量を求める計算式は、以下の通りです。
所要数量 = 設計数量 × 割増係数
割増係数とは、国土交通省による公共建築数量積算基準で定められており、部材によって異なります。
図面の拾い出しで使用する基準
図面の拾い出しについて、民間工事の場合は特にルールはありません。企業や取引先によっては独自ルールを定めている場合もありますが、基本的に図面の拾い出しでは、国が定めた基準を活用します。特に国や地方自治体の公共工事では、国の定める「建築数量積算基準」などの基準に則って積算を行う必要があります。国土交通省が定める公共工事の積算基準類には、以下があります。
- 公共建築数量積算基準
- 公共建築工事積算基準等資料
- 建築工事標準歩掛り
- 電気設備工事標準歩掛り
- 機械設備工事標準歩掛り
- 建築工事積算基準
- 建築設備数量積算基準
- 公共建築工事標準単価積算基準 など
図面の拾い出しでの注意点
図面の拾い出し作業は、正確性を求められる重要な業務です。拾い出しにおける主な3つの注意点について解説します。- 人的ミスを回避する
- 属人化しないよう注意する
- 設計図の特記事項や分担した際の境界部をよく確認する
人的ミスを回避する
拾い出しは作業量が多いこともあり、手作業で行うとヒューマンエラーが起きる可能性があります。代表的なものには、以下があります。- 項目の拾い漏れや拾い落とし
- 文字やカンマの転記・転用ミス
- 計算ミスや桁の記載ミス
上記のようなミスがあると、現場に必要なものが届かない、もしくはロスが過剰に出る、といった問題につながります。手作業で拾い出しを行う際には、マーカーでチェックしながら進める、複数人でダブルチェックを行うなどの対策を講じる必要があります。
属人化しないよう注意する
拾い出しは、専門性が求められる作業でもあります。そのため、豊富な経験や専門知識のある社員に任せるケースが多くなり、属人化してしまう可能性が出てきます。また、特定の担当者への負担が大きくなる上、スキルを持つ人がいつまでも育たないままになってしまいます。精度の高い拾い出しができる人を増やすために、システムや専用ソフトの活用も検討してみましょう。
設計図の特記事項や分担した際の境界部をよく確認する
拾い出しの作業では、設計図の特記事項を確認することが大切です。図面上の情報が多くなる場合、一定の表現を省略するために特記事項を設けることがあります。特記を見落としてしまうと、数量漏れの原因になるため注意しましょう。また、複数人で分担して拾い出しを行う際には、分担箇所の境界部に注意が必要です。各人の作業の境界部は、前述の人的ミスが見られやすい傾向があります。平面図や設計図だけでなく、立面図や詳細図などを照らし合わせながら進めましょう。
図面の拾い出しのコツ
時間のかかる図面の拾い出し作業を、正確かつ効率的に進めるコツは、主に次の3つです。- 現場業務や業界に関する専門知識を習得する
- 技術向上に向けた勉強会で情報交換を行う
- 積算ソフトを導入する
現場業務や業界に関する専門知識を習得する
工事の内容や作業の順番など、現場業務について理解を深めることは、図面の拾い出しの効率化に役立ちます。施工全体の流れを踏まえ、各場面で必要になる資材や機械を把握しておくと、現場のイメージが沸きやすくなります。おおまかな数量や人材を図面からイメージできれば、拾い出しでの項目漏れや数量ミスの回避につながるでしょう。また、工事の前後に行われる工程に関する知識は、業界の知識として将来的に役立つ可能性があります。
技術向上に向けた勉強会で情報交換を行う
ベテラン社員を交えた勉強会を開催し、拾い出しや積算技術の向上を目指しましょう。拾い出しの間違いを含む積算ミス事例や現場で活用できる積算テクニックの共有により、作業効率性アップにつながります。また、経験者が持ち合わせている勘や感覚についても情報交換ができます。ミスが起きやすい場面や作業を全員が事前に把握できれば、必要な対策を講じることが可能です。
積算ソフトを導入する
拾い出しに使う積算ソフトは、図面を読み込んで数量の拾い出しを自動で行えるソフトのことです。積算ソフトを活用することで、手作業による人的ミスを回避できる上、短時間で正確な拾い出しが可能です。製品によってはPDFやCADデータなどさまざまなフォーマットに対応しており、経験が浅い社員でもすぐに覚えて操作できるでしょう。
図面の拾い出しで積算ソフトを使用するメリット
図面の拾い出しに積算ソフトを活用するメリットとしては、以下の点が挙げられます。- 拾い出しが半自動化され担当者の負担軽減に役立つ
- 人的ミスのない拾い出しが効率的に完了する
- 担当者によるバラつきや属人化を防げる
- 単価を一元管理できる
- 過去のデータ管理や自動分析も可能
- 他の見積もりシステムと連携できる
- クラウド形式なら現場でも閲覧・編集が可能
拾い出しソフトは、図面データを読み取って自動で拾い出しを行います。正確な拾い出しを短時間で行えるため、業務効率化に役立ちます。製品の中には、マウスで図面をなぞって拾い出しができるものもあり、経験や知識量によらず対応できれば担当者の負担軽減につながります。
また、過去の似た規模や工法の工事データを保存でき、参照しながら作業すれば大幅な拾い漏れを防げるでしょう。見積ソフトなど他のシステムと連携できる製品なら、積算から見積までスムーズに完了します。
まとめ
図面の拾い出しは、工事現場での作業や予算管理に直接影響する重要な作業です。作業には、専門知識や経験を要しますが、積算ソフトを用いることで自動化が進み、正確な拾い出しがより簡単に実現するでしょう。「plusCADシリーズ」は、水道や電気、設備工事における図面や書類作業をサポートする専用ソフトです。水道設備工事に必要な機能だけを揃えた「plusCAD機械α」や「plusCAD電気α」には、材料拾い集計機能があり、ミスのない拾い出しが瞬時で完了します。現場業務の効率改善や時短化に役立つソフトの導入を、この機会にぜひご検討ください。
図面の拾い出しについてよくある質問
図面の拾い出しにはどのくらいの時間がかかりますか?
図面の拾い出し作業は、工事の規模や内容によって変わりますが、目安として100㎡前後の戸建て住宅は2週間前後かかるとされています。規模の大きな施設では、複数人で分担して進めても約1ヶ月〜1.5ヶ月かかるようなケースもあります。図面の拾い出しの注意点は?
図面の拾い出しでは正確性が重要です。ただ、通常の工事でも作業量は多く、手間がかかるため、以下の注意点を把握した上で取り掛かると良いでしょう。- 人的ミスを防ぐ
- 属人化に注意する
- 特記事項や分担時の境界部をよく確認する
拾い出しを手作業で行う場合、拾い漏れや計算ミスなどヒューマンエラーが発生する可能性があります。マーカーでチェックする、複数人でのダブルチェックを行うなどの対策を講じて、ミスを回避しましょう。
また、拾い出しは専門性が高く、経験値も作業性に影響します。属人化を防ぐためにも、積算研修や勉強会など情報共有の機会を設け、全体のレベルアップを図ることが大切です。作業時には、設計図の特記事項や分担した境界部などの細部を確認しましょう。
図面の拾い出しの具体的な進め方は?
図面の拾い出しは、おおまかに以下の流れで進めます。- 必要に応じて工種別に担当者を決める
- 国土交通省による積算基準で割増係数を確認する
- 図面の情報を読み取る
- 計算式から所要数量を算出する
一般的には、国土交通省で定められている基準を用いて計算します。
図面の拾い出しにはどのようなテクニックやポイントがありますか?
図面の拾い出しで使えるテクニックやポイントとしては、以下があります。- エクセルでフォームを作成する
- 見やすいマーカーでチェックしながら進める
- 拾い出しソフトを活用する
エクセルで拾い出し用のフォームを作成しておくと、数量を記録しながら作業できます。手作業の場合、見やすい色のマーカーを使って図面に書き込んでいく方法が有用です。拾い出し用の積算ソフトは導入費用がかかる場合もありますが、拾い出しを正確に効率よく完了できて便利です。