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  • 2024年08月02日

配水管を設計する流れや素材選定で満たすべき要件を解説

水道工事に関する知識
配水管を設計する流れや素材選定で満たすべき要件を解説

水がガス、空気などを必要な場所に運ぶ配管は、幅広いシーンで重要な役割を担っています。

人々のライフラインである水を供給する「配水管」は、不備があると水が行き渡らなくなる、下水が排水されなくなる、といったトラブルにつながるため、適切な設計と施工、設置が重要です。

 

本記事では、配水管設計の手順や配水管の素材選びなどについて解説します。配水管設計について理解を深め、業務に役立てていただけると幸いです。

配水管とは?布設する目的

配水管とは、各家庭に水を運び入れるための配管です。配水場または浄水場内の配水池から市内全域に網の目状に張り巡らされており、各家庭につながる給水管に接続しています。
 

口径の太い管から、より細い管へとつながっており、数百kmほどの配水管が道路に埋設されています。配水管は一定の圧力を得るために、配水塔などの自然圧やポンプを利用しています。
 

水の滞留を防ぐ目的もあり、原則として配水管は網状に布設されています。やむを得ず、接続先のない配水管を行き止まりとして布設する場合には、定期的に放水できるように消火栓を設置するなどの工夫が施されています。
 

配水管と同じ水道の配管には、導水管や送水管があります。導水管は、原水を送るための管です。河川から貯水池を経由して浄水場に送る管と、水源から浄水場に送る管などが含まれます。送水管は、主に浄水場から配水場へ浄水を送るために使われる配管です。
 

私たちが家庭で使用する浄水は、導水管と送水管、配水管、そして給水管を得て、蛇口に届いています。
 

 

配水管設計の手順

ここからは、配水管設計の流れについて解説します。配水管設計における主な手順は、以下の通りです。
 
  1. 現地踏査
  2. 道路工事調整
  3. 測量・調査
  4. 埋設物調査
  5. 管理者との協議
  6. 用地の確認
  7. 地域住民への説明
  8. 設計
 

各項目について詳しく見ていきましょう。
 

現地踏査

まずは、設計対象となる場所の現地踏査を行い、環境や状況を確認します。現地踏査とは、土地の地形や地質、沿道の利用状況、支障物件の有無、埋設物などを調べることです。主に、以下のような項目を確認します。
 
  • 道路状態:道路種別や幅員、道路屈曲状況、交通量、交通規制の状況、迂回路、スクールゾーン、バス運行時間など
  • 地上・地下構造物:管路の付帯施設や電柱、架空線、標識、ガードレール、橋梁の位置など
  • 路線周辺の状況:騒音や振動など沿道構造物への影響など
  • 関連事業:他社との競合工事の有無や施工時期など
 

道路工事調整

続いて、配水管工事に関係する道路工事調整の手続きについて確認しましょう。公道を掘削しなければならない場合、道路交通法(第77条)に基づき、所轄警察署に申請して道路使用許可を取得する必要があります。
 

道路を頻繁に掘削すると、道路交通の障害となるうえ、資源の無駄にも繋がるため、一度路面を復旧した後は、一定年次掘削を伴う工事ができなくなる掘削抑制措置が取られています。そのため、長期的な計画を踏まえて、工事区間や時期を調整しなければならない場合もあります。
 

道路管理者、交通管理者、各占用企業者から構成される道路工事調整協議会が設けられている場合は、それぞれで決められた様式に道路名や施工場所、工法などの必要事項を記載し、提出します。また、合理的かつ円滑的に工事が進むように、他業者工事との同時施行の有無や近接工事との兼ね合いなどで施工時期の調整が必要な場合もあります。
 

測量・調査

工事の規模や施工環境に応じて、測量調査や地質調査を実施します。配水管工事の測量調査では、以下のような測量を実施します。
 
  • 水準測量:既知点に基づいて水準点の標高を定める
  • 現地測量:実施設計に必要な平面詳細図を作成するために現況の地形や地物を測定する
  • 路線測量:中心線測量、銃弾測量、横断測量
 

地質調査では、工事場所付近の既存の土質調査結果を参考とします。詳細な構造計算が必要な場合は、標準貫入試験や土質試験などの地質調査も行います。
 

埋設物調査

配水管工事では、埋設物の調査も重要です。基本的には、埋設物の管理者の図面や現地踏査を使用して、工業用水道や下水道、電気、ガスなどの配管の占用位置、形状、寸法などを明確に把握します。その後、必要に応じて地下埋設物調査などを実施して、埋設状況を確認します。 
 

埋設物が古く、実際の埋設状況が図面や管理台帳の内容と大きく異なる可能性があるときには、試掘調査を実施する場合もあります。試掘調査では、地下埋設物の種類や位置、深さ、 構造を調べ、管理者が所有する資料の情報と照合します。
 

管理者との協議

配水管設計に向けて、該当する管理者と協議を行う必要があります。例えば、道路専用工事が必要な場合は道路管理者と、また河川を占用する場合は河川管理者と協議を行います。
 

他にも、所轄消防署や軌道管理者、公共交通機関担当部署、公園管理者などとの協議や調製を実施するケースもあります。工事が必要となる場所の状況や環境によって、ケースバイケースで協議や調整が入るため、協議期間や資料などもそれぞれで変わります。
 

用地の確認

配水管は原則として道路などの公共用地に埋設しますが、やむを得ず私有地に埋設しなければならない場合は、用地の買収もしくは地上権の設定などの対応が理想的です。そのため、事前に用地調査などを通して確認しておく必要があります。
 

用地調査では、公私の不明確な場所について 公図や土地台帳などを使って調査、 確認を行います。借地の場合は、土地所有者の承諾を事前に文書で得ておくと無難です。
 

地域住民への説明

大規模な工事など、工事により影響が出る地域や関係するエリアの住民に対して、事前説明を行い、理解を得ておくことも重要です。
 

工事期間中に通行止めを行う時期や騒音、振動などの可能性がある場合、地元説明会を開催するなど近隣住民に周知しておきましょう。
 

設計

配水管の設計では、多くの図面を作成する必要があります。基本的には、設計図、特記仕様書、施工計画書、数量計算書、工事費積算書などが必要です。
 

配水管の管種や口径、工事の始点・終点などの設計条件を明確にしておきます。占用位置に関しては、現地踏査や埋設物調査を基に、道路管理者との協議によって決定しておくとスムーズです。
 

 

配水管の素材選定で満たすべき要件

配水管の素材を選ぶ際には、安全性や埋設条件、埋設環境への適合などさまざまな要素を総合的に考慮する必要があります。また、水道法において定められた水圧の範囲内に収めることも重要です。ここでは、配水管の素材選定における要件について解説します。
 

安全性

配水管に用いられる素材の種類は、後の章で詳しく解説しますが、ダクタイル鋳鉄やステンレス、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなど多数あります。
 

配水管の素材を選ぶ際には、材質による浄水の汚染のおそれがなく、水道法の規定に基づく「技術的基準を定める省令」に示された浸出基準を満たしているもので、且つ安全性が確認されている必要があります。
 

水圧を考慮した強度

配水管では、水圧を考慮した強度であることも重要です。水道法に基づく技術的基準を定める省令により、配水管の水圧は「配水管から給水管に分岐する箇所での配水管内の水圧は、150kPa(0.15MPa)以上740kPa(0.74MPa)未満を維持する」よう定められています。
 

配水管の用途として、中を通る水の外力や内圧に耐える強度も必要です。外力は、土圧や路面荷重、地震力なども考慮して決める必要があります。 
 

また、内圧では、実際に使用する管路の最大静水圧と、水撃圧を踏まえて決定します。素材により目安の水撃圧は異なり、ダクタイル鋳鉄管や鋼管、ステンレス鋼管では0.45MPa〜0.55MPa、硬質ポリ塩化ビニル管やポリエチレン管では0.25MPaとされています。
 

埋設条件や埋設環境への適合

素材選びでは、土質や地下水の状況や路面荷重など埋設場所の諸条件を考慮して選ぶことが大切です。 腐食性の強い土質や地下水がある場所では、防食性のある素材が適切です。また、ガソリンや灯油など有機溶剤の影響が想定される場合は、ポリエチレン管や硬質ポリ塩化ビニル管は避けるべきでしょう。
 
その他の地下埋設物がある場所や、埋戻しが行われるような場合は、継ぎ手構造に対する施工性も考える必要があります。埋設環境によっては、柔軟性のある伸縮継ぎ手の仕様を検討すると良いでしょう。
 

 

配水管に使う素材とその特徴

配水管の種類には、ダクタイル鋳鉄管、鋼管、ステンレス鋼管、硬質ポリ塩化ビニル管、水道配水用ポリエチレン管などがあります。それぞれの素材によって強度や製造方法、維持管理のしやすさなどの条件が異なるため、施工場所に最適なものを選ぶことが大切です。
 

現在、水道管に使用されている主な管種の種類と特徴を大まかに説明します。
 

【ダクタイル鋳鉄管】
ダクタイル鋳鉄とは、従来の鋳鉄の組織中に、細長い片状に分布していた黒鉛を球状化させた鋳鉄のことです。ダクタイル鋳鉄管では、強度や延性が改良されています。重量は比較的重めですが、衝撃に強く施工しやすいため、継ぎ手部品にも使われています。
 

【HIVP管(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)】
HIVP管(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)は、近年主流となっている樹脂製の水道管です。プラスチック製のため、錆び付きが起きる心配がありません。軽量で加工しやすく、施工時や修理コストが安く済む点もメリットです。ただ、急激な温度の変化に弱く、水道が凍結すると割れる可能性があるため、寒冷地には不向きでしょう。
 

【ポリエチレン管】
HIVP管のデメリットを補う形で使われているのが「ポリエチレン管」です。管と継ぎ手を接着剤やテープなどを使わずに接続でき、取り付けが容易で扱いやすいため、さまざまな場所で使われています。また、振動や熱、化学物質による影響を受けにくく、耐震性も確保できます。ただ、価格がやや高く、紫外線に弱いため、場所や用途によってHIVP管とポリエチレン管を使い分けるケースが増えています。
 

【ステンレス管】
錆びにくいステンレスを使用したステンレス管は、高価ではあるものの100%リサイクル可能で長く使えるため、現在需要が高まっています。塗装なしで使えるため、地上露出部などでも採用されています。
 

 

まとめ

配水管は、配水場から各家庭に水を運び込む水道管のことです。導水管や送水管、給水管と並んで、生活に必須である水を供給するために重要な役割を果たしています。
 

配水管設計では、現地踏査や埋設物調査、測量調査など現地の状況を細かく調べる必要があります。また、工事箇所の管理者と事前に協議、調整を行い、必要に応じて各種届出を提出しておくことも大切です。
 

上記のような手順は、配水管の素材選定にも重要な情報源となります。実際に配水管設計に取り組む際には、「水道施設設計指針」を必ず確認しましょう。
 

 

配水管の設計についてよくある質問

配水管と導水管、送水管、給水管の違いは何ですか?

配水管は、配水場から各家庭に水を運び込むための水道管です。配水場または浄水場内の配水池から、各家庭につながる給水管に接続しています。導水管とは原水を浄水場へ届ける配管のことで、河川などの水の場合は貯水池を通って浄水場に送られます。
 

導水管を通り、浄水場へ送られてきた水は、送水管を通して配水場へと運ばれます。配水場はエリア全域に必要な水を届けるための貯留と分配を担っています。
 

給水管は、配水管を通ってくる水を各家庭に引き込み、供給する配管です。まとめると、河川などの水源から導水管、送水管、配水管、そして給水管の順で水が流れ、各家庭に到着しています。
 

配水設備とは何ですか?

排水設備とは、「給排水設備」とも呼ばれ、「給水設備」と「排水設備」の2つで構成されています。給水設備は、住宅やマンションなどの建物に水を供給するための設備で、排水設備は下水を建物から排出するための設備です。
 

給排水設備には、給水管や排水管、貯水槽、ポンプなどが含まれており、設備全体が機能することで必要な水の供給と排出が行われています。
 

給水設備が故障し、飲料水が供給されなくなれば、日常生活を送ることが困難となります。また、水道管の中にサビが出る、などのトラブルがあれば、生活する人の健康に支障を及ぼすリスクもあります。そのため、給水設備は常に適切な状態に管理、整備されている必要があります。
 

配水管の水圧の基準は?

配水管の水圧は、水道法の規定に基づく「水道施設の技術的基準を定める省令」で定められています。配水管から給水管に分岐する箇所において、最小動水圧は150kPa(0.15MPa)以上、最高動水圧は740kPa(0.74MPa)となっています。
 

配水管の素材にはどのようなものがありますか?

配水管に用いられる一般的な素材には、ダクタイル鋳鉄やステンレス、HIVP(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレンなどあります。耐久性や耐食性、紫外線や熱への強さ、加工のしやすさといった性質がそれぞれ異なるため、工事場所の環境や水圧などの条件を基に、適した素材を選ぶ必要があります。
 

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